父の言葉 ページ43
愛車で真夜中の高速道路を走り抜け、半ば転がり込むようにして実家に帰る。
実家に待機していたまだ高校生の妹が、「お父さんなら病院だよ」と教えてくれて、ついでに乗せていくようせがまれた。この妹はおねだりがそれはもう上手なのである。「おねーちゃんおねがい♡」と両手を合わせる妹はやっぱりかわいくて、あたしに断ることなんてできなかった。
夜間入口から入り、看護師さんにお願いして父の病室に連れて行ってもらう。そんな時間すら惜しくて、向かっている間で父の容態について全部聞いた。
父はかなり危ない状況にあるらしい。三年も前から病気を抱えていたとか。それでずっと板場に立っていたのか父は。とんだバカ野郎だ。
「お父さっ……！」
「A！」
「え、姉さん来るの早っ……」
病室に飛び込めば、さめざめと泣いている母と若干引いている弟がいた。一応実家戻ってから来たことを告げると、弟は「絶対スピード違反してるだろ」とぼそり。……ときどき違反してたかも。
母には妹を連れてきたことで怒られた。彼女は明日学校の期末テストがあるらしい。こんな状況でそんなこと気にしてたまるか、と思ったけれど、母曰くこんな状況だからこそだそうだ。みんなが揃うと父が死んでしまいそうで嫌だ、という母の言い分も理解できる。
父は青白い顔でベッドに横たわっている。お父さん、とあたしが声をかけると、父はぱちりと目を開けた。
「あ、目ぇ開いた。なんだずっと起きてたんじゃん」
「な・わ・け・ないでしょ！ ずっと眠ってたんだから！！ あーん起きてよかったあなた♡」
「すげえな姉さん、姉さんが来た瞬間目が覚めるってどんなドラマだよ。しかも母さんじゃないんだ」
「お兄ちゃん、あたしも一緒に来たんですけど。かわいい妹のことをお忘れ？」
「お前にそんなパワーがあるわけないだろ」
空を見つめる父、案外簡単に起きたことに拍子抜けするあたし、ひしっと父に抱きつく母、喧嘩を始める弟と妹。カオスである。さっきまでお通夜モードだったとはとても思えない。
しかし状態が悪いことに変わりはないようで、そのことをナースコールされた看護師さんに聞いたみんなは再びお通夜モードに突入した。
「……A、……」
「はいAだよお父さん」
珍しく弱々しく名前を呼ばれて、いつも通りおちゃらけて笑い返事をする。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……！ 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね！ 更新頑張ります。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです！さっき更新された話もまじ良かったです！ 更新待ってますっ！！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです！ 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？ コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ苺 | 作成日時：2020年5月21日 19時
