＊ ページ12
遅刻した。
「てっめ何遅刻して来てんだァ！！！」
「すみませんでしたァ！！！」
「わかればいいんだよ。さて仕込みに入ろうか」
「はい師匠」
師匠はちょっとよくわからない人である。六十超えてて優しげな見た目で料理の腕は超一流、世界的に有名な板前さんなのに、言葉遣いやノリが若々しい。
この料亭の裏のボスである奥さまはこれまたお優しい方で、よく飴ちゃんをくれる。あれ、ガキ扱いされてる？？？
師匠に弟子入りして七年。相変わらず師匠との実力差に心が折れかけている。
まあたった七年でプロに追いつけるわけないんだけど。あと二十年くらいかけて追いつこうと思っています。追い越すのは同い年になっても難しいかな！
「ふんふふふーん」
「へったくそな鼻歌だねえAちゃん。なんか良いことでもあったのかい」
「一昨日超かわいい子を拾いまして」
「なんだ誘拐か。おーいまさ子、１１０番」
「違いますぅ！ 外国住みだった従兄弟がうちに来ただけですぅ！」
口は動いているものの手は止まっていない。自分で言うのもなんだがプロだ。何のとは言わない。
ちなみに叔母のまさ子さんは奥さまから来ている。叔母はいるが、名はふみ子である。四十八才独身、仕事に人生を捧げているカッコイイ女性。尊敬してる。
「最初は全然笑わないし口数少ないし無愛想な子だなって思ってたんですけど、だんだん喋ってくれるようになって。さっき出てくるときに『いってらっしゃい』って玄関まで見送りに来てくれたんです」
「そっかーなんだよかったじゃねぇか。独り身でずっと寂しかったんだろ？」
「その子十四ですよ」
「おっといけねえ犯罪だ」
口は動いているものの手は止まっていない。自分で言うのもなんだがプロだ。何のとは言わない。
ちなみに師匠はあたしの倍に近い速さで包丁を動かしている。いやあたしは遅くない。あたしだってプロの料理人に負けないくらいの速さでキャベツ千切りにできる。ただ師匠はちょっと次元が違うのだ。
「だから今日は早めに上がらせてもらいます」
「早めに上がるも何も、いつも『帰りたくね〜〜』とか言って二時間も店でだらだらしてんのAちゃんだろ」
「おっといけない手が滑ったァ！！」
「てめっ、俺に包丁向けるたァ良い度胸してんじゃねェかァ！！」
大乱闘になるのはいつもの流れである。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……！ 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね！ 更新頑張ります。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです！さっき更新された話もまじ良かったです！ 更新待ってますっ！！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです！ 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？ コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ苺 | 作成日時：2020年5月21日 19時
