捨て……人？ ページ1
仕事終わりの午後十時。
今日も今日とて鬼畜だった師匠にお別れをし、疲れきった身体を引きずるようにしてなんとか借りているアパートまで帰ってきた。
カンカン、とよく響くボロアパートの階段を上り二階へ行き、階段から最も離れた自分の部屋に目を向けた。
……なんかいる。
あたしの部屋のドアに背を預けて座り込んでいる、人？ 子供だろうか。服は泥がついて汚れている。
やばいヤツかもしれない。関わらないほうが身のためだ。でも部屋の前にいる。
部屋の前にいる。
どうすべきか。あたしもさすがに子供をこんな時間に放置しておくほど鬼じゃない、けど、とても無視したい。
ちなみにこのアパートの住人じゃないことは把握済み。
「ねえ、キミ」
「……」
「疲れて帰ってきたあたしの部屋を塞いでるキミだよ、ねえ起きてる？」
「……おねぇさん、誰？」
「いやこっちのセリフ＿＿＿＿＿＿え」
だるそうに上げられた顔を見て、息を呑んだ。
金髪に蒼い瞳に褐色肌。モデル顔負けの整った顔立ちには見覚えがあった。
「安室さんやん」
ぼそりと呟く。彼には聞こえていないはずだ。
そう、目の前の彼は安室透にそっくりなのである。本名は降谷零で公安警察で、黒の組織ではバーボンというコードネームを持つ、あの彼に。
そっくりさんは世界に三人はいると言うけれど、二次元キャラのそっくりさんなんているものなのか。生きてりゃおもしろいこともあるんだなと呑気に考えた。
さて目の前の少年(小学生あるいは中学生に見える)は、虚ろな目で宙を眺め、ふらりとその大きな目を閉じた。
「……えっ寝た？」
とりあえず彼をどかして鍵を開け、荷物を玄関先に置いてしばらく熟考する。
知らない男の子、しかも訳アリっぽい子を家に上げるのはどうなのか。いたいけな少年を誘拐して来た二十代女性としてお茶の間に知られることにはならないだろうか。でも朝になってお隣さんが少年を発見したら、『この寒い中部屋から追い出し外に寝かせた鬼畜女』という図ができかねない。それは困る。
ちなみに季節は冬である。
黙って少年を家に上げた。彼はわりと軽かったのであたしでも抱き上げることができた。
違う。
あたしはこの幼い少年を見捨てられなかっただけで、べつに推しとそっくりでしかも幼いとかやん萌える♡とか思ってない。
断じて違うのだ。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……！ 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね！ 更新頑張ります。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです！さっき更新された話もまじ良かったです！ 更新待ってますっ！！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです！ 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？ コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ苺 | 作成日時：2020年5月21日 19時
