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スマホは買わなくていい、という方向に決定した。車を出して、大通りを走らせる。安全運転かつスピードはぎりぎりまでしか出さない。チキンですから。
ちら、と助手席に座る少年を横目で見て、この子は将来過激なカーチェイスを繰り広げるんだなあと妄想を膨らませる。ゼロシコでのあれはやばかった。もはや人間じゃねェ。一番の被害者は電車に乗ってた人だと思う。
まさか自分が人間じゃないと評価されているとはつゆ知らず、少年が楽しそうに街を観察している。
「そんなに街見て面白い?」
「面白いというか……迷ったときのために道を覚えておこうと思って」
思ったより理由がマジメだった。やっぱこの子頭いいわ。中二の段階であたしより頭良さげとか。ムカつきたいところだけど、未来の安室さんにムカつくとかないな。どんなあなたも愛します。
信号に引っかかり(無理やり通ろうとしたらすごい目で睨まれた)、ハンドルを人差し指で叩きながら、他愛もない話に興じる。
「なんで僕のこと『少年』って呼ぶんです? 名乗りましたよね」
「何、名前で呼んでほしいの? でもきみもあたしを名前で呼ばないじゃん」
「僕があなたを名前で呼んだら、僕のことも名前で呼んでくれるんですか」
「約束するよ」
ここの信号長いんだよなぁ……。と、いつもならそう思っていたはずだけど、今回は苦に感じなかった。話し相手がいるって幸せなことだ。
でも信号が長いことには変わらん。
「じゃあ……A、さん」
「はい、零くん」
「ッ……信号、青ですよ」
「了解了解」
ニヤニヤしながらアクセルを踏む。かわいいなあ、零くん。
「あー、敬語も外していいよ。そんな年離れてないでしょ」
「十一も離れてますけど」
「大したことないよそんなの。七十七も八十八も変わらないさ」
「いやかなり変わります」
「いいからいいから。あたしは敬語使われるくらい偉くもないし。さんづけもいらない」
あたしが知ってるあなたはあたしより年上だし。
零くんはしぶしぶ、「……わ、かった」と返事した。「よくできました」と頭をぐしゃぐしゃに撫でると、「片手運転はダメだ」と言われた。うーんかわいくなくてかわいい。矛盾だ!
アパートに着き、大量の荷物を運んで、いっぱいおしゃべりをして一日を終えた。夜ご飯を美味しそうに食べてくれたのがうれしかった。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時