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強く握りしめられている少年の左手に、あたしの右手を優しく重ねる。
少年がぱっとこちらに振り向く。きれいな蒼い瞳が、どこまでも透き通って揺れた。
「少年。普通、子供は大人に甘えるものだよね?」
「……まあ」
「だよね。それならいいの」
にっこり笑って少年の左手を揺らすと、少年は呆気にとられたようで、ただでさえ大きな目をさらに大きく、真ん丸にしてみせた。
年相応でかわいいところもあるじゃないか。スマホを片手で操作しながら、右手で少年の頭をぽんぽん撫でる。待ってこれめっちゃさらさらやーん! 絹のようだ! くっそ! イケメンはどこまでもイケメンなのかよ!!
しかし電話がかかってきて、あたしは警察官さんたちに断って部屋の隅に行き、電話に出た。
「もしもし、Aです。お父さん?」
『急になんだ、電話してくれって……』
「今交番にいるんだけど。……ああ、なんか迷子拾って」
『は?』
「だから用件は手短に…………え? あー、まさこ叔母さん? 覚えてるよ、イギリス人の旦那さんがいる……」
『……はぁ』
「……へえ、子供いたんだ? おめでとう〜〜って今からじゃ遅いか。ふうん十四才……結構前じゃん。……なんで知ってるの、まあ今日は休みだけど。……は? うちに来る? 聞いてないし! …………待って。その子の名前は?」
『…………』
「あー……わかった。じゃあね、仕事頑張って。……ありがとう」
ぴっと通話終了を押して、はあぁ、と深くため息を吐いた。いや事情察してくれたのはありがたいんだけど、放置することなくない? まだ仕事じゃないのわかっててメールしたんだけど??
申し訳ない……という顔をつくり、警察官さんたちのほうを向いた。
「本当にすみません! この子、イギリスの従兄弟みたいで! 今連絡がきたんですが、日本に来る間うちに泊まることになってたようで」
「そうなんですか? じゃあ、この子が言ってた米花市っていうのは……」
「イギリスのベイカーストリートのことではないでしょうか。変に日本語と混ざっちゃったんでしょうね」
「あっ……そうなんです! 日本語に合わせたほうが良いかなって思って……紛らわしくてすみません」
困り顔のまま早口で説明をしていると、空気を読んだ少年が話を合わせてくれた。しかもちょっとカタコトである。できる子だ。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時