ちょっとした幸せ ページ18
翌朝、あたしは零くんよりも早く目が覚めた。今のところ毎日だ。零くんより早く起きることの何がいいって、寝顔が見られる。それだけで三文以上の徳があるよね。百両くらいで妥当かな?
あたしの腰に巻き付いている腕を外してやり、零くんの髪を軽く梳く。ベッド脇の窓のカーテンのすき間から淡く光が差し込み、零くんを照らした。
……天使だ。
零くんの金髪が透明感を持ち、褐色の肌がきらきら光る。この世のものとは思えない。……この世のものじゃなかった。
ベルモットの天使が蘭ちゃんなら、あたしの天使は零くんだな……なんて思いながら髪をいじる。
「……ん」
「あ、やべっ」
「A……? いまなんじ……」
「五時」
起こしてしまったようだ。寝てていいよと言うと、零くんは再び夢の中へと旅立った。もう一度頭を撫でて、あたしはベッドを抜け出す。
抱き着かれて暑かったのか、じんわり汗をかいていたのでシャワーを浴び、パーカーとカーゴパンツを身につける。家中のカーテンを開けて回り、ついでに寝ている零くんを起こさないように部屋からメイク道具を取ってきた。
あたしのメイクはぶっちゃけ五分かからない。あんまりこだわらないから早く終わる。……ただ下手くそなだけである。
「メイク苦手だからやりたくないけどすっぴんもすっぴんでやばいよな……」
メイクの時間だけは独り言が増える。
本当にうすくメイクを施したあと、朝食の準備に取り掛かった。
最近は洋食続きだったから、今回は和食にしよう。お米を炊き、アボカドの茶碗蒸し、きゅうりのサラダ、ナスの梅和え、豆腐とわかめのお味噌汁、赤魚の竜田焼きをちゃっちゃかつくっていく。零くん、苦手なものあるかな……。
好きなものはセロリって、なんかこう、予想の斜め上をいくよね安室透。それが人気の秘密か。
味を調整したり、盛り付けにこだわったりしているうちに、家の中いっぱいにいい匂いが充満した。
いい匂いに釣られて、部屋から零くんが出てきた。足取りがふらふらしている。まだ眠いのかな。まあ六時半だし、昨日も遅かったし、早起きなほうだろう。あたし中二のときは七時過ぎまで寝てた。
「あ、零くんおはよう!」
「……おはよ、いい匂いだな」
「そうでしょ。顔洗っといで、ご飯にしよう」
早起きすると、零くんより先におはようって言えるのが幸せ。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時