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目が覚めると、見たことのない白い天井が見えた。
小説とかでありがちな展開で、思わずふっと笑ってしまう。
「おや、目が覚めましたか?」
「……誰?」
声がした方を見ると、金髪碧眼の青年が立っていた。
見た感じ、日本人だけの血ではなさそうだ。
「僕は安室透。あなたは?」
安室……。
その名前、どこかで見たことがある……? なんの書類だ?
いや……思い出せないなら敵ではないのだろう。
自分の脅威になり得る存在は全て暗記しているはずだし。
「…私はAA。安室さん、これ、あなたがやってくれたんですよね? ありがとうございます」
そう言って私は右腕と左脚に巻かれた包帯に目を落とす。
「いえいえ、人として当然のことをしただけですよ。でも、丸二日も目を覚まさないので心配しましたよ」
そう言って笑う安室さんの顔が、「彼」の顔と重なった。
…そうだ、早く帰らないと。
心配しているかもしれないし、何より「彼」は怒ると面倒なのだ。
「あの、私、帰ります。これ以上お邪魔するわけにはいかないし…」
「そうですか? でも、まだ目が覚めたばかりですし…」
「いえ、帰りを待ってくれている人たちがいるので。私がいないと、仕事がうまく回らないんです」
「へぇ、何のお仕事をされているんですか?」
少し目を細めて言う彼は、側から見れば優しく微笑んでいる、そう見えるだろう。
だが、私はこの顔を見たことがある。何度も。
…疑われてる。
直感だったが、きっと当たっているはずだ。
「大したことはしてませんよ。…親の手伝いってとこですかね」
嘘は言っていない。
嘘をつく時は、真実をベースに。
「彼」が昔、言っていた。
「ふぅん…まあいいでしょう。送って行きますよ。家はどこです?」
む、まずい。この質問の答えは用意していない。
「あー…迎えにきてもらうので大丈夫です」
「いや、でも、」
「メールしたいんですけど、私のパソコンありますか?」
畳み掛けるように言うと、安室さんは潔く諦めてくれたようでホッとした。
「……ええ、ありますよ。少し待っていてください」
安室さんが部屋を出て行くと、途端に体から力が抜けた。
慣れないことはするものじゃないなぁ。こういう腹の探り合いみたいなことは慣れてないんだよ…
白を基調とした部屋は、ほとんど生活感がない。…「セーフハウス」みたい。「彼」の部屋と、よく似ている。
やっぱり、安室さんのこと後でちゃんと調べておかないと。
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作者名:海鈴 | 作成日時:2018年5月15日 11時