フリーナ様を甘やかすだけの話

稲妻旅行 ページ12

少しだけ寝坊して慌てて宿を飛び出し、
バタバタと乗船する。

ふぅ、と一息ついた所で辺りを見回すと、
一面青い海と空が広がっている。


『すごい絶景、視界全部が綺麗な青色だよ』


｢本当だね、フォンテーヌでは見られない景色だ……ふふ、まだ目的地へ着いていないのに満たされてしまうよ｣


心地好い風が吹いていて、
フリーナの髪がふわふわなびいている。

ときどき顔に髪が当たって｢うっ…｣と顔を顰めているのもまた可愛らしい。


フォンテーヌにいたら見られなかった様子がひとつ見られて、先日の寂しさはさっぱり忘れてしまった。


｢A、A！見てごらんよ、あれはもしかして稲妻じゃないかい！？｣


フリーナが指す方向を見ると、
遠くに島のようなものが見えた。

山頂らしき所が光っているように見えて
何だかすごく神秘的だ。


長かったはずの船路もあっという間に過ぎて、
稲妻に到着した。


ピンク色の花びらが舞っていて、フォンテーヌでは見られない趣ある景色が広がっている。


周りの人々がみんな自分たちとは違う服を着ていて、つい目を奪われる。あれは着物という、稲妻の伝統的な服らしい。


歩いて離島を離れ、稲妻城の辺りへやって来た。


｢あった、このお店だね！A、着物をレンタルして着られるそうだよ。ぜひ着てみないかい？｣


『本当？いいね、着てみたかったんだぁ』


フリーナは濃い青の着物に白い帯をしていて、
白と金の蝶々の刺繍がすごく綺麗。

お店の方がフリーナの髪に飾りを付けてくれて、
髪も蝶々や花飾りで彩られている。


『すっごく可愛いし綺麗。バッチリ似合ってるよ』


｢そうかい？ありがとう、Aも着ておいでよ｣


お店の人に呼ばれる直前、
フリーナがお店の人に何か渡しているのが見えた。


何だろう？とは思ったけれど、
手を引かれ着付けに連れていかれてしまった。


淡い紫に白い帯で、桜の模様がとても綺麗。


「わぁっ、すごく似合っているね！本当に綺麗だ……」


熱を帯びたような瞳で見つめられて、
頬が赤く色付いてしまいそうになった。

お店の方がしてくださったお化粧のおかげで
頬の赤さはきっとバレていないだろう。


お店を出るとフリーナに手を引かれ、
露店の椅子に座った。


何かいい物を見つけたのだろうか、
フリーナの瞳が輝いている。


「団子牛乳を2つお願いできるかい？」


フリーナの口から飛び出した食べ物(?)の名前により
私の頭に衝撃で雷が落ちた気がした。

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