No.29 rat…そして重なる面倒 ページ30
「………」
Aは僅かに足を早めるが、一瞬のズレを挟んで音は重なり続ける。私を追ってきてるのは間違いないか……と確信を得ながらも、Aはぱっと路地を抜けて大通りに出た。平日の帰宅時間の大通りは学生、会社員でかなり混雑している。
その中を、小柄になったAは難なく歩いていく。人混みの中を抜けたとは思えないほどのスピードで信号を横切り、向かいの道路の路地に入り込む。そこから間髪入れずに右に曲がり次の通りに出る。それを数回繰り返し、ぱっとコンビニの前で足を止めたAは塀に身を寄せながら耳をすませた。
「…………振り切ったか」
追ってくる足音はなく、ふぅと一息ついたAはポケットから携帯を取り出した。
「……Hi,I'm scarlet. Please bring "s-n-a-k-e"」
それを何処かにかけ、繋がるとすぐに流暢な女性の声で端的に伝える。電話向こうの了解の声を聞くとそれを切り、またすぐに歩き出す。
「(私を追ってたratは後でいいとして、本格的にこれはどうしたものか……この見た目じゃ下手にホテル泊まりなんてすれば警察に繋がれる。これ以上有希子さんにお世話になる訳にはいかないし、最悪隠れ家………は、まずいか……)」
こうなったら野宿でもするか……と考え出したAは歩き出してほんの数歩、再びその足を止めた。無表情が少し顰めっ面になる。
prrrr prrrr prrr……
「(今日は本当に電話が多いわね……)」
もう何度目かわからない今日の着信。取引や交渉のために電話を使用する事は多いが、それにしても今日は多すぎた。
「(……面倒事は重なると聞くけど、こんなに身をもって味わうとはね……はぁ、勘弁してよ)」
必然的に心の中の声もため息混じりになる。それは携帯に表示された名前のせいでもあった。気乗りしない着信相手だが、出なければそれこそ面倒が倍になってやってくる。
「…………はい、私です」
『出るのが遅ぇぞ』
「すみません、人前で貴方の電話を取るわけにはいかないでしょう……それで御用件は？ジン」
『ふん……ベルモットから聞いただろうが、仕事だ。今夜杯戸町のホテルで一人始末してこい』
電話に出てAがさらっと嘘を吐くと、電話の相手……組織の幹部の一人、ジンは冷たく言い放った。
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文月鎖夜(プロフ) - ちょこちょこですが小説進めてます！ (2016年4月24日 14時) (
レス) id: 3c35e627c1 (このIDを非表示/違反報告)
文月鎖夜(プロフ) - 神さん» ありがとうございます(*^▽^*)頑張らせて頂きます！！ (2016年4月10日 21時) (レス) id: 3c35e627c1 (このIDを非表示/違反報告)
神 - 面白いです！！更新頑張ってください！ (2016年4月10日 21時) (レス) id: 36229bb8d8 (このIDを非表示/違反報告)
文月鎖夜(プロフ) - かりんとうさん» ありがとうございます*^^*これからも世良はちょくちょく出そうと思ってるので^^* (2015年11月27日 0時) (レス) id: 8b8cd9f128 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 乙です〜！世良ちゃんはやっぱり可愛いですね(( 主人公も可愛い*^^* (2015年11月26日 23時) (レス) id: 87f8bb60e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：文月鎖夜 | 作成日時：2015年7月8日 16時
