067 まさか ページ18
多くのファンも待ちに待ったIDOLiSH7のデビュー、そしてアルバムツアーが始まった。わたしは基本的にみんなのレッスンコーチを行いながら、ステージでは相変わらず現場には行かずに見守ることに徹していた。未だにステージで彼らを応援できずにいるのは、まだわたしにはそれに見合った勇気がなかったから。でも、いつか。ステージの袖から、みんなのことを送り出せればいいななんて思うようになった。
「今頃、みんなは大阪かあ〜」
懐かしいなあ、全国ツアー。
地方なんかにいくと今までなかなか会えなかったと言うファンは多い。そんな人たちからの熱気は、最高のステージをファンと一緒に作っているのをとても実感できる。きっと最後に東京へ戻ってくる頃には、きっとみんなはもっともっといい顔をしているだろうなと思うと、ちょっとだけ楽しみ。
「きゃああああ!」
「モモだー!」
「…え?ん?なに、桃?」
「きゃああああ!Re:valeのモモでしょ!」
「え…?Re:vale…?モモ…?」
ーーーまさか、そんなわけがない。
「そうそう!今急いでんの!」
「…うそ。モモ、くん」
最後に彼を見たのは3年前。あの頃と全くと言っていいほどに変わらないその姿は、わたしが本当は会いたいと思いながらも、でも絶対に会いたくなかったあのモモくんだった。
「えっ撮影!?」
「そうそう!どっちが早く駅までつくかって企画!」
「じゃあ邪魔しない方がいいね!ごめんなさい!頑張って…!」
「いいよ〜大丈夫、大丈夫!あっ!あそこに八乙女楽いるよ!G・A・K・U!G・A・K・U!」
「え!?」
「憧れのTRIGGERの八乙女楽だよ!行って行って!サイン!サイン書いてくれるから…!」
もしかしたらどこかのテレビの企画だったのかもしれない。街のどこにいても、彼は眩しくて明るい。その光が、相変わらずモモくんらしく感じて、ふっと笑いが溢れた。
たった一目でも会えただけで嬉しいと思えている時点で、わたしはもっとはやく2人に会いに行くべきだと言うことには気づいていた。なぜならRe:valeの2人はわたしを救ってくれた大事な人たちだから。でもそれをわかっていながら、結局のところこうして1歩を踏み出せていないのは、怖いという感情があるからだ。
必死にこの世界で生き、夢を掴んで、ついにトップアイドルとも呼ばれるようになった2人の邪魔をしたくはない。それを言い訳に、わたしは2人から拒まれることを恐れていつまでも逃げ続けていた。
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瑠奈(プロフ) - 068 嫌い の「自分を愛してくれる人を愛したいなんて思う人いる?」というセリフは変ではないでしょうか? (2019年5月21日 11時) (レス) id: 6936f9c053 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年4月12日 4時) (レス) id: a6e6d18aa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:深瀬 | 作成日時:2019年4月12日 2時