060 つまらない ページ11
「大和さん」
「ん?なんか用?」
レッスン終わり、帰ろうとする大和さんへ声をかける。
「どうして断ったの?ドラマ出演」
「興味ないからな」
「…大和さんはたとえ興味がなくても、みんなのためになるなら断ったりしない人でしょ。今回の出演は絶対にIDOLiSH7にとってはチャンスだよ」
「………」
「興味がないんじゃない。大和さんはドラマに対して…演技に対して抵抗があるんでしょ」
指摘は図星だったのか、大和さんは何を言わずに目を逸らした。
演技に対する抵抗となるとわたしと同じように共演者やその関係者に会えない事情があるのか、もしくは公共のものに顔を出せない事情があるのか。
「つまんないね」
「は?」
「せっかくアイドルになって、せっかく実力認めてもらえてるのに。それを棒に振るなんて、大和さんはそれでいいの?」
「………」
「だったらどうしてIDOLiSH7にいるの?」
「あんたに何がわかるんだよ」
「わかるよ。わたしが同じだから。人に恵まれて、認めてもらえていた才能もあったのに、それを全て捨ててきた人間だから。でも大和さんには、そうなって欲しくないんです」
今までの人生でたくさんのものを捨てて生きてきた。ずっと大切にするつもりだった仲間や幼少期から育ててきた才能、そして大好きな音楽への執着。捨ててきたものを今さら取り戻そうなんて思わない。
「…っ、はあ、はあ…っ。くそ、またはずれた…」
「…ミツ、まだやってんのか」
「おお、大和さんに花音。オレ、たまにみんなとダンス合わなくなるからさ。同じようにやってんだけど、どこでずれてるんだろ」
「…そりゃそうだろ。ミツは小柄なんだから歩幅が違う。立ち位置の移動の時ずれるんだよ。だろ?コーチ」
「…うん」
「ああ、そっか!よーし、もう一回やってみよう」
やっぱり良く見てる。今回三月にアドバイスをしなかったのは、どうしてずれるのか考えておいでと課題を出してきたから。グループのチームワークをあげるために、誰かが気付いてあげられたらいいなと思った。何となく、大和さんかなとは思っていたけれど。
「…はは。おまえってさ、いつも一生懸命だな」
「そりゃそうだよ。一生懸命じゃなきゃつまんねえじゃん!」
「………」
「それなりにやってそれなりに成功しても、それなりしか嬉しくねえだろうし。だったら全力でやって全力で成功して、全力で喜んだほうが気持ちいいじゃんか。全力で失敗することもあるけど…そんときゃ、全力で悔しがればいい」
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瑠奈(プロフ) - 068 嫌い の「自分を愛してくれる人を愛したいなんて思う人いる?」というセリフは変ではないでしょうか? (2019年5月21日 11時) (レス) id: 6936f9c053 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年4月12日 4時) (レス) id: a6e6d18aa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:深瀬 | 作成日時:2019年4月12日 2時