008 改めて ページ9
レッスン場に入ると、結果発表に相当緊張していたらしい彼らはビクッと反応した。
「も、もしかして…」
「結果出たんですか！？」
「あっごめんなさい。それはまだ。もうすぐ紡ちゃんが来るはずなんで彼女を待ってください」
「なんだ…」
ちょっと申し訳ないことをした気分。
「九条さんはなぜこちらへ？」
「花音」
「？」
「苗字で呼ばれるのが好きじゃないから、花音って呼んでくれると嬉しいな。ええっと…」
「…和泉一織です。先程のオーディションで聞いていたでしょう、花音さん」
「人の名前覚えるの苦手なの。けどありがと。一織くん」
一織くんが改めて自己紹介をしてくれたのを筆頭にもう一度全員が自己紹介をしてくれた。名前を正確に覚えてはいなかったが、それぞれの能力はちゃんと覚えている。
和泉一織。たしか17歳と言っていたか。しかし歌唱力やダンス、飄々としたその佇まいはおおよそ17歳のものではないと感じてしまうほど完成度が高かった。仕事に対する真面目さは信頼に値する人物だと言わざるを得ない。しかし、これは大きな心配とはならないが、やはり若さゆえと本人の性格からして逆境には弱そうだという印象を受けた。また、いくら完璧でもアイドルとしてやっていくには根性と目標がなければ、正直続けていくのは困難だ。なぜ彼がアイドルを目指しているのかはわからないが、一織くん自身が夢を持たばければいつかそれで悩む時は来るかもしれない。
「二階堂大和。よろしくな花音ちゃん」
「…大和さん。大丈夫、いまちゃんと覚えました」
「やっぱいまなんだ」
二階堂大和。最年長の22歳。7人の中で表現力が群を抜いていた。また、常に冷静に物事を判断しているため、突然のことにも上手く対応してくれそう。彼の弱みをあえてあげるとすれば、オーディションが決定した時点ですぐさま辞退を申し出たことからもわかる程々の力加減ってやつ。あの時は聞かなかったが、アイドルになる目的が復讐っていうのも少し引っかかる。最年長としてグループを引っ張っていくには間違いなく必要になる人だが、彼が一生懸命になれる場所にしてあげないと新しいこのアイドルグループも「まあいいや」で終わらせてしまいそうという恐怖があった。
「和泉三月！よろしく、花音！」
「三月さん」
「さんとかなしでいいよ。仲良くしようぜ」
「！…うん、よろしくね三月」
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作者名：深瀬 | 作成日時：2019年3月22日 22時
