049 賭け ページ50
ミュージックフェスタでチャンスを掴むと決めた翌日。
「答えを聞かせてもらおうか」
「………」
「TRIGGERに曲を書け。九条花音」
「…お断りします」
わたしが断るはずないとでも思っていたのだろう。目を見開く八乙女さんの姿を見て、珍しい姿を見ることができたなと思った。
「断ればどうなるのか、わかっているのか」
「…Crarisuのカノの存在が世間に露見される。それによって、わたしが恐れている自体が起きてしまうかもしれない」
「わかってるなら、」
「もしもあなたの誘いを断れば、わたしはリスクを背負う。だけどそれはわたしだけじゃない。あなたもじゃないんですか？」
「何？」
「Crarisuは元々ツクモ所属のアイドル。つまりわたしのバッグにはツクモがいます。いくら八乙女事務所といえど、ツクモ事務所のタレントの情報を勝手に流したとなったら、当然目をつけられるでしょうね」
「………」
「これはあくまで可能性の話。だけどあなたの昨日の話も可能性にすぎない」
わたしにとってもこれは賭けだった。
当時15歳のわたしと18歳のアキ。2人で作ったグループ「Crarisu」がたった2年でゼロを超えると言われるようなアイドルになれたのは、わたしたちを所属させてくれたツクモのおかげだった。彼らのプロデュースがなければ、いくら2年でもあそこまでファンがついてくることはなっただろう。
そのツクモをある意味裏切ってまで解散したCrarisuだが、世間の誰もはその真相を知らない。これだけはいくら調べようとも八乙女さんにもわからないだろう。それを踏まえた上での今回のこの賭け。
すでに解散したグループにツクモは固執しないだとか、昔より勢力の落ちたツクモなど眼中にすらないだとか言われたらどうしようかと思ったけど、ちゃんと効果はあったようだ。
「…それとIDOLiSH7のデビューに力を貸すって話ですが、そちらもあなたの手を借りるまでもありません」
「何だと？」
「昨日IDOLiSH7のミュージックフェスタ出演が決まりました」
「IDOLiSH7がミュージックフェスタに！？」
「…未来は自分たちで決める。IDOLiSH7のコーチである以上、彼らを裏切ることも見捨てることもしません。ありがたいお話でしたが、お断りさせていただきます」
「なぜ小鳥遊なんだ！？」
「…小鳥遊社長はCrarisuのカノとしてではなく、九条花音として誘ってくれた。IDOLiSH7は、何も言わないわたしも受け入れてくれてる。彼らが大事に思ってくれてるから、わたしも大事にしていきたい」
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作者名：深瀬 | 作成日時：2019年3月22日 22時
