【アイナナ】ココロの歌 (ページ4)

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003 約束の日ページ4

次の日の朝、起きた時に決心がついた。
ーーー1回行ってみよう、それ次第にしよう。
ちなみに昨日日本に帰国して働き手がないわたしだが、ノースメイア行きを支援してくれた例の彼がわたしが戻ってくるのに合わせて日本に家を用意しておいてくれた。何でも不動屋さんを経営しているんだとか。本当に至れり尽くせりだ。就職先も用意してくれたら文句もなかった。すでに文句が言えない立場だが。

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「ここが、小鳥遊事務所…」

紙に書いてあった地図を頼りに小鳥遊事務所へ到着をした。
思っていたよりもこじんまりとした事務所だ。小鳥遊音晴の名前は聞いたことがあるような気がしたが、事務所自体を見ると気の所為だったのだろうかと思わざるを得ない。
とりあえずここで考え込んでたらこのまま立ち去っちゃいそうだ。そう思いチャイムを鳴らした。

「はーい」
「あ。あの、すみません。わたし、」
「…え？どうして、君がここに…？」
「？」

出てきたのは長くて青い髪をひとつに括ったイケメンさんだった。そしてまたもや私のことを知っている風だ。

「俺のこと、覚えてないかな…？」
「…すみません」
「えっ！？あ、いやこちらこそ急にすみませんでした！それで何か用かな？」

わたしが自分のことを覚えてないのを知った彼は一瞬悲しそうな表情をした。覚えていないことに少し申し訳なさを覚える。ズキっと胸が痛んだ。
ーーー時間かけてでも思い出さなきゃ。忘れられるのは、つらいことだから。

「あの、わたし昨日小鳥遊さんに振り付けと講師を頼まれて…」
「ああ！社長が言っていた方か。中へどうぞ」
「…お邪魔します」

彼を先導に中を沈黙の中で歩く。
わたしはこの人に会ったことがあるらしいが、わたし自身この人のことを覚えていない。それなのにわたしから会話を振るなんてちょっと難易度が高いなあ。
けど向こうも同じはずだ。自分のことを忘れている相手に会話を振るなんて、わたしには出来ない。

ーーー『ごめんなさい。あなたは、誰ですか…？』

わたしには、出来なかったんだ。

「そういえば、」
「！」
「自己紹介してませんでしたよね。俺、事務員の大神万理っていいます、よろしくね」
「九条花音です。よろしくお願いします」
「花音ちゃんね。俺のことも適当に呼んでもらって構わないから」
「じゃあ、万理さん」
「うん。それで、到着。この部屋が社長室だよ」

社長室に到着したらしい。