017 歌声 ページ18
「ちなみに、パート決めはどうやって行っていくんですか？」
「え、えっと…」
「みんなはまだメンバーの歌声は聞いたことなかったよね？それなら、一人一人この曲の最初のワンフレーズを歌ってみて」
「わかりました！」
「花音さん、ありがとうございます…」
「いいえ。じゃあ、陸くんからどうぞ」
「了解です！えっと…じゃあ、いきます！」
彼から奏でられた新曲のワンフレーズに、みんなは声を失った。誰が聞いても圧倒される歌声。やはり陸くんの歌声はこのグループの強い武器になる。
「…え…？あなたの声ですか？」
「…陸くん、歌うまいね！月並みな言葉しか思い浮かばないけど、すごい歌唱力だよ！」
「ワオ！感動しました！」
「そっ…そうですか…？」
「自信持って。陸くんの歌声、オーディションで初めて聞いたけどわたし聞き惚れちゃったよ」
「じゃあ、このサビのとこリクでいいんじゃね？」
陸くんを主軸にパートがどんどん決まっていく。これも後々紡ちゃんと話し合わなくてはならないので確定事項ではないが、このグループのセンターは恐らく陸くんになるだろう。
だからこそ、やはり一度彼とは話さなくては。彼の抱えている爆弾を、見て見ぬフリは出来ないから。
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「陸くん、ちょっといい？」
「花音さん？はい、わかりました」
「かののんの話、長い？」
「ちょっと長いかも」
「じゃ、先帰ってんな。お疲れ様、花音ちゃん」
「お疲れ様」
レッスンが終わると、みんなは自分の家に帰る。近い内に寮を用意する予定らしいが、今はまだ準備の段階なんだとか。
「花音さん、お話って？」
「単刀直入に聞くね。陸くん、何か病気を患ってるでしょ？」
「ッ…！」
「オーディションの時に感じた違和感。それが今日のレッスンではっきりわかった。陸くん、本当は過度な運動は控えるように言われてるんじゃないの？君はあまりにも疲れるのが早すぎる」
「それは…」
ただの喘息にしてはあまりにも症状が重すぎる。それがオーディションで私の感じた違和感だった。
彼は呼吸器系に病気を患ってる。それこそ少しの運動だけでも咳が止まらなくなったり、息も切れやすいほど重いものを。今はまだ起きてないが発作を起こす可能性もあるかもしれない。
「どうして、黙ってたの」
「ッ…！知られたら、辞めろって、言われると思ったから…」
「………」
「オレ、辞めたくない…！」
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作者名：深瀬 | 作成日時：2019年3月22日 22時
