013 久しぶり ページ14
「随分と久しぶりだね、花音」
「…お久しぶりです。了さん」
IDOLiSH7コーチ就任の日、わたしはその足である人に会いきた。というのも、彼から突然「ヒマでしょ？地図送ったからこのカフェにおいで」というラビチャをもらったのだ。失礼な人だなとは思ったが、今に限った話でもないので指定されたカフェまで出向いた。
そもそもこの人には会いに行かなきゃと思っていたし、了さんの頼みごとをわたしは断れない。
「改めてになりますが、ノースメイア留学の援助をしていただき本当にありがとうございました。おかげで無事に3年間有意義なものに出来ました」
「ああ、いいよ。そんなこと」
そう、彼こそわたしのノースメイア留学を支援してくれたパトロンだった。海外に行くために必要となるもの、向こうで必要になるもの、すべてを用意してくれたのだ。どうしてそうなったのか。この経緯はまた後日。
「そんなことじゃないです。了さんがいなかったらわたしはきっと今でも、」
「その話は花音がノースメイアに行っている間に耳にタコができるほど聞いたよ。それよりもさ、君いま何してるの？」
「？了さんとカフェにいますけど」
「そんなすっとぼけた回答しろとは言ってないよ。ノースメイアから帰ってきてすぐ仕事紹介しろって連絡来るかと思ったら全然来ないんだもん。せっかく君が困るかと思ってわざと用意しなかったのに、台無しじゃないか」
「…わざとだったんですか」
「わざとだよ」
確かになんで了さん仕事の紹介までしてくれなかったんだ！とか仕事くださいって頼みこもう、というのは考えた。するつもりだった。だがそれを見越した上でわざと用意しなかったなんて、本当にこの人性格悪い。日本で住むための家は用意してくれてるから本当は優しいんだけど。
「わたし、ノースメイアから帰国して直ぐにオファーを受けたんです。アイドルグループのコーチと振り付け師っていう」
「帰国してすぐ？大丈夫？その人危ない人なんじゃない？ちゃんと断った？」
「向こうが強引すぎて断れずにいたら、自分の大切なものをそこで見つけて、その仕事に就くことになりました」
「花音は押しに弱いからね」
「了さん、あなたに恩返しが出来ずにすみません。恩知らずですみません。でもわたし、ようやく見つけました。自分がここにいたいと思える場所」
「………」
「本当は今日、わたしに仕事紹介するつもりだったんですよね？」
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作者名：深瀬 | 作成日時：2019年3月22日 22時
