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何も知らんくせに、危険な作業現場にずかずか入ってきて
こっちが怒られるべきなのに、ジュンは親方に言い放った。
「この子はここで働かせられませんので明日から来ません。よろしく！」
アタシの返事も親方の返事も聞かずに、手首を引っつかまれたまま
ぐんぐん歩き出したジュンにアタシはただただついていくだけだった。
中身は女でも、数年土木で働いて筋肉だって男の体なんだからつきやすいし
当たり前のように細くて折れそうなジュンに力で負けるはずがないのに
ジュンはまるで錘でもつけてるんじゃないかと思うほどに動かなかった。
離れないから「ジュン、ジュンはなせって」と何度も声をかけるのに
こっちも見ずにタクシーを捕まえ、こっちを見ずにタクシーに押し込まれる。
逃げないように、なのかずっと手首を握ったまま
運転手がアタシとジュンを見て一瞬目を見開いたが、ジュンが行き先を告げると
黙って車を動かした。
静かな車内で、ジュンの呼吸がやけに荒くなっているのに気づいた。
横を見るとぎょっとするほどないていた。
それはもう泣いていた。
運転手が目を見開いたのは、ジュンを見てのリアクションだったのかと気づく。
ぬぐう事もせず涙を流し続けるジュンの横顔を、アタシも何もできずに見つめた。
ジュンが着ている白いシャツ。
首元が少しゆるくなっていて、首元が見えた。
紫の石がきらりと輝いたネックレスは、花のモチーフ。
忘れもしない、かすみ草の形をしていた。
「ジュン…」
漏れでたつぶやきは、そのまま沈黙に飲み込まれる。
現場に持ち物をすべて置いて出て行ってしまった所為で、手持ち無沙汰のまま
車は高層マンションの前にゆっくりと止まった。
何も言わず、涙も止まらないジュンは
それでもカードを運転手に渡す。
色を見てぎょっとした。
年齢的にも、まだ大学生のはずのジュンが持てるようなものじゃない。
それでも納得できるのは、ジュンの家柄的に持っていてもおかしくないと思ったからだった。
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笙緒(プロフ) - とても感動しました。自身も普通ではないので、こういう話を書いてくれることに感謝しています。とくにハマ子さんの「完璧な中途半端になる」が刺さりました・・・ (2019年1月24日 4時) (
レス) id: e66222057e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - カマ愛とても好きなお話です！移行後も楽しみです！たくさん世間を知ったジュンちゃんを始め、言葉がどれも刺さりました。ハマコのお話はいろんな気持ちになりました…。せかんども楽しみにしています！！ (2018年12月19日 3時) (レス) id: 99b67e1c08 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - 更新お疲れ様です。そして、ありがとうございます。毎回楽しく読ませていただいてます。個人的に、いろんな感情とマッチして、揺さぶられて、涙が出てしまいました。とても素敵な作品だと思います。これからも楽しみにしてます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 03516e5203 (このIDを非表示/違反報告)
うめはな(プロフ) - 初コメ失礼します(*_ _)深瀬さん更新ありがとうございます！何かのご縁で初めて深瀬さんに出会ってから1.2ヶ月ほど？でしょうか。この作品が本当に好きで積もる思いが多くありすぎるので文字制限の中で感想を伝えきれません…笑 セカンドも楽しみにしていますね。 (2018年12月18日 22時) (レス) id: 4b9dff3fa4 (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - 更新待ってました！嬉しすぎます！取り急ぎ嬉しい事だけ伝えたくて！時間作ってゆっくり読みます(^^) (2018年12月2日 19時) (レス) id: 69b62aacad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：深瀬
| 作成日時：2018年10月21日 23時
