カマが愛を背負ってくる【JW】

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私の母は裕福な家で育ったらしい。

らしいというのは、生まれてから物心がつくまでそんな面影を一切感じることがなかったからだった。

朗らかで、いつもゲラゲラ笑っているような明るさが取り柄の母は、私がもっともっと小さいときに他界した父の代わりに女手一つで私のことを育ててくれたのだ。

まさか、一人になるなんてゆめゆめ思っていなかった。

体調を崩して二、三日横になっていた母がある朝冷たくなっていたのが、ちゃんと覚えている最後の記憶で

あとは気づけばトントン拍子で事が済んでいた。



「姉が生前お世話になりました。この子は僕が引き取らせてもらいますが、きちんと時間をかけてこの御恩もお返しさせていただきます」
「恩なんて、ええのよ。私らもね、ユキちゃんとAちゃんに沢山元気と笑顔貰った身やから。ホンマに沢山沢山苦労して、これから先もっといーっぱい幸せなこと見つかるから、踏ん張りなさいね。Aちゃんはオバちゃんらの希望の星や」



斜め前に住むチバのオバちゃんが目を細めて、涙をそっとハンカチで拭いながら頭をなでてくれた。

本当にお世話になりました、礼を一つすると頭上で


「淳太、くんやっけ？しっかり守ってあげてね。今日私らも聞いてられへんかった。ユキちゃんはそんなん言われるような子ちゃうんよ。それだけはAちゃんにも勘違いしてほしない。ずっとユキちゃんはAちゃんのええお母さんやった。私らが保証する。」

「僕にとっても自慢の姉やったんです。せやから今日のことは本当に申し訳ありませんでした。ずっと僕らにとっては自分らの家族が敵やって。もう、僕らを縛るものはどこにもありませんので、ようやく前を向けます。姉にも安心してもらわなアカンから。」


チバのオバちゃんは中間さんの頭もグシグシと撫でて、泣いていた。

中間さんも、頬に涙の筋を光らせて、それでも微笑って泣いていた。



今日、私は中間さんの養子になった。




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