「愛してない」 (ページ41)

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「うま！これAちゃんが作ったの？」

『あ、はい』

「凄いね。いいお嫁さんになるね！」

そんな笑顔で褒められれば、いくらわたしでも照れる。

お茶を飲みながら笑顔で小さく頭を下げた。

こんな風に３人でご飯を食べて、その後食器を洗っていたらひかるさんがキッチンに来る。

水を止めてひかるさんを見上げれば、困ったように眉をしかめさせていた。

「悪ぃな、色々。アイツ悪い奴じゃねぇけどうっさいから」

『あ、いや、わたしこそ…もっと愛想良く出来たらいいんですけど。』

「構わねぇよ別に。それよりお前、今日みたいに待ってなくていい」

『えっ……』

その言葉に、少しだけ胸が痛くなる。

ひかるさんはわたしから視線を外し、深澤さんを見つめながら言った。

「普段はここまで遅くないけど、でも何があるか分かんねぇし。今日みたいな日は気にしなくていいからお前は寝とけ」

『でも…』

「A。」

名前を呼ばれてビクリと肩が震えてしまった。

この人に名前で呼ばれるのは、少しドキッとする。

ひかるさんはわたしの頭をポンと撫でてから、風呂入ると呟いてキッチンから出て行った。

その後ろ姿をぼーっと見つめていると、肩を叩かれた。

リビングに居た筈の深澤さんが、いつの間にかわたしの目の前に居て少し驚く。

「照、冷たいねー」

『つ、冷たくないですよ！』

慌てて首を振るものだから、そんなわたしを見て、深澤さんは目を見開く。

だってひかるさんは、冷たくない。

ひかるさんが冷たい人なら、わたしなんかとっくに捨てられてる。

深澤さんはにやっと笑って、ひかるさんが居るであろう洗面所に視線をやった。

「岩本照って人は基本的に冷たい奴だよ」

『え…？』

「だから、Aちゃんが大事なんだね」

言ってる意味が、よく理解出来ないわたしは首を傾げた。

深澤さんはわたしの耳元に唇を寄せ、どっから出したんだと問いたくなる程の低音で囁く。

「照の秘密、教えてあげようか」