「愛してない」 (ページ5)

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翔太には、わたしが必要なんだ。

今まで生きて来た中で、それだけがわたしの生きる糧になった。

だってわたしにも翔太が必要なんだもん。

翔太がわたしを必要としてくれるから、わたしも翔太が必要なんだ。

そんな間違った依存関係を、もう5年も続けて来てしまった。

翔太は優しかった。

誰よりも何よりもわたしを優先してくれた。

それがわたしには心地よかった。

だからわたしも、翔太を誰よりも何よりも優先するのは当たり前だと思ったんだ。

それで翔太がわたしから離れていかないのなら、ちっぽけな束縛なんて気にならなかった。

携帯を見られても、門限を決められても、別に平気。

何がいけなかったのとか、どうすれば良かったのかとか、今になってはもう分からなくて。

当たり前の世界で生きて来てると勘違いしていたわたしは、不意に“これが当たり前じゃないんだ”と気付いた瞬間、無性に、堪らなく、翔太が怖くなった。

彼はわたしを殴るようになった。

それは、翔太を怖いと感じてしまったわたしが度々約束を破るから。

殴った後、翔太は必ずわたしを抱き締めた。

優しく、優しく抱き締めた。

この優しい腕が、さっきわたしを殴ったんだ。

不思議な気分だった。

でも彼は優しくわたしの頬を撫でるから。

わたしが必要なんだと、悲しそうに呟くから。

そうだよね、翔太はわたしが居ないと駄目なんだから。

そう訳の分からない事を考えて、いつも翔太を抱き締めて眠るの。

疲れたって。

有り得ないって。

そんなのいつも思ってる。

翔太に対するこの気持ちだって、本当はもう恋愛なんかじゃない。

翔太は酷い。

翔太がいけないんだ。

そう想っているのに、彼の弱さを必要としてるのはわたし。

本当に酷いのは、誰？