「愛してない」 (ページ38)

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大学は相変わらずつまらなかった。

みんなどこから情報を仕入れてくるかは知らないけど、翔太と別れたことを知ってる生徒もいた。

聞こえてるから、そのヒソヒソ話。

まあ、わざと聞こえるように言ってるのかも知れないけど。

……翔太は、今どうしてるんだろう。

なんて、ちょっと思ってみたりもした。

『ただいま…』

いつもと違う帰り道にまだ慣れなくて、不思議な気持ちになる。

わたしとは不釣り合いな大きなマンション。

それを見上げて頬が綻んだ。

最初は、どうなる事かと心配だったけれど。

わたし的にはひかるさんと上手くいってると思うし、これからだって何事もなく過ごせる事を祈ってる。

独りのアパートに帰んなくてもいいんだ。

それが、嬉しい。

『帰って来てないか…』

まぁ当たり前の事だ。

休日でさえ家であんなに仕事持ち帰って頑張ってたんだから、普段も忙しい人なんだろうなとは思う。

冷え切った薄暗い部屋に電気を付けて、それからエアコンを付けた。

ちゃんと買い物もして来た。

ご飯を作って、お風呂も沸かして、ひかるさんの帰りを待ってよう。

部屋に鞄を置いて、楽な服に着替えようとクローゼットの扉を開ける。

端っこには、持ってきた数少ない自分の服。

その隣から、ズラリと並ぶわたしとは真逆の綺麗な洋服。

ここにいた誰かが、着ていたもの。

なんとなく、ワンピースを手に取って着てみたら、案外ぴったりだったりしたものだから、今日は借りてみよう。

『用意しなきゃ。』

誰かのために作る夕ご飯と、誰かのために沸かすお風呂。

独りだった時はめんどくさくてやりたくなかったけど。

誰かのためにする家事は、何だか楽しい。

やりたいとさえ思えてくるから不思議だ。