「愛してない」 (ページ28)

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「お前さ、生活費とかどうしてたの」

今日から、ここにお邪魔させて貰う事が決まった。

しばらく泣いていたわたしをあやすように何度かわたしの頭を撫でてくれていた岩本さんは、わたしの隣に座りそう問う。

わたしはズズッと鼻を啜った。

『わ……わたしが、あの、バイトして…』

「バイト？どんな。」

『……』

「どんな？」

『キャ、キャバクラ…』

答えたくなかったけど、あまりの威圧感にあっさり答えると、岩本さんは眉をしかめさせ溜め息をついた。

「学費は？」

『……学費は、あっちが……』

しまった。

聞かれたくない事を予告もなくあっさり聞かれ、いつもの答えが用意出来なかった。

しどろもどろになるわたしに、岩本さんは優しく促す。

きっとこの人は、わたしに親が居ない事に気付いている。

それを踏まえての“生活費は？”という質問だろう。

大丈夫。

今までだって何とかやって来た。

ここで、住まわせて貰うのならきちんと自分の生活費も稼ぐし家賃全部は無理でも半分は払うつもりだ。

めんどくさいなんて、思われたくない。

『あの……あの、大丈夫ですわたし…家賃、頑張って払いますし、身の回りの事も、きちんと…家事も、しますから…！』

「あのな、」

『大丈夫です！バイト増やして、が、頑張りますから！』

岩本さんは言ってくれた。

“側に居てやる”

そう言った。

その言葉が、わたしは何よりも嬉しかった。

翔太という存在がなくなって、頑張ると口では意気込んでいてもきっとわたしはまた挫けてしまうだろう。

こんな言い方はいけないけれど、まだ“生きる理由”があると思えば、強くいられるから。

だから、ここで嫌われたくないんだ。

めんどくさいって。

せっかく見つけた、生きる理由なんだもの。

『あの、っ』

「A。」

グシャッと髪を乱暴に掻き混ぜられ名前を呼ばれる。

翔太以外の人に名前を呼ばれた事に、純粋に胸が高鳴った。

「家賃はいい。つーか、そんなバイト止めろ。」

『えっ…でも？！』

「家事は俺あんま出来ねぇから任せるかもしんねぇけど、それ以外は別にいい」

信じらんない。

きっとわたしの顔は今そんな感じだろう。

わたしの顔を見た岩本さんはクスッと笑った。