「愛してない」 (ページ27)

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痛いくらいの沈黙の後、岩本さんは呆れたように、息を吐いた。

それが何を示しているか分からなくて、わたしは思わず肩を竦める。

「ここに、住むか」

『……え？』

「ここで今まで知らなかった事、気持ち、全部取り戻して。自分の足で歩けるようになったら、出て行けばいい」

『で……でも……め、迷惑、』

「今更だろ」

『っでも、』

「A。」

名前を呼ばれて、ぴくっと肩が揺れた。

「1人が嫌なら、いくらでも側に居てやる。」

どうして。

「だから、もう、こっから目ぇそらすな」

こんなに優しくしてくれるんだろう。

「ここが、お前の生きてる世界だ」

ここが、わたしの、世界。

ボロって、きっとまた涙が流れたんだろう。

でももう、止めようなんて思わない。

これが、わたし。

これがわたしの生きてる世界。

そう思えたらこの世界が、何故か急に愛しく思えてきて。

また涙が出た。

「つーかさ。お前今まで頑張ったよ。」

『……うん、』

「他人だけどさ。他人だから、目一杯迷惑誰かにかけてみれば？」

『いいの、？』

「これも何かの縁だし。もういいよ。」

『……っ、ありがとう、ありがとっ…』

ここが、わたしの、始まりだ。

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