「愛してない」 (ページ14)

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『……何で泣くの。』

「っ……、」

『わたしが居る事、知ってたんでしょ？翔太に他の女が居ても受け入れてたんでしょ？それなのに今何で泣いてるの？』

「馬鹿にしてんの……？」

彼女の手の力が強まった。

殴られるかもしれない。

そんなどうでもいい事を考えた。

「……翔太は、」

『……』

「翔太は、あたしにも、他の女にも本気になんなかった……アンタを引き留める手段に…あたし達を利用してんだよ…っ」

彼女の唇が、狂ったように歪んだ。

その瞬間吐かれた呪いの言葉を、わたしは一生忘れないだろう。

「だってアンタも翔太も、親に捨てられたから捨てられんのが怖いんでしょ？！」

チカチカと、わたしの目の前が弾け飛ぶ感覚。

まるで自分が自分じゃないかのような、感覚。

頭が真っ白ってあれ、ほんとにあるんだね。

一気に気分が悪くなって、わたしはその場から逃げるように走り去った。

わたしの中で、絶対に触れちゃいけない部分がある。

それはわたしの中の、絶対的なルール。

別にわたしの事が嫌いだとか、気に食わないだとか、そんなのいくらでも言えばいい。

ただわたしの中に入って、中を汚すという事は、わたしに死ねって言ってるようなものだ。

ーーーーーーー

アパートに戻れば、煙草を吸っている翔太が居た。

翔太はわたしの姿を見るなり、笑顔を浮かべる。

「A！今日は早いのな！」

『……』

「バイトは？…まぁ行かなくていいよ。ずっと俺と居ればいいし。」

『……翔太、』

「今半同棲みたいになってるけど、もう同棲しちゃおうか。」

『翔太！！』

翔太を睨むと、彼は笑っていた唇を引きつらせた。

ヤバいと、感覚的に思ったけれど。

わたしももう止まりそうになかった。