「愛してない」 (ページ49)

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曖昧に笑って、ソファに座る。

「照は、知ってる？」

ゆっくりと、首を横に振る。

なるべく症状を軽く見られるように、今度は声を上げて笑ってみせた。

『ほんとに大丈夫ですから』

「あー言うと思った」

『何が…？』

「Aちゃん未だ俺に心開いてくれないんだもんなぁ」

大袈裟に泣き真似をした深澤さんに何と言ったらいいか分からなくて、呆れた声を漏らせば深澤さんは唇を尖らせてわたしを見る。

「今めんどくさいとか思った」

『……そんな事ないですよ』

「その掛け合いがすでにめんどくさいとか思った！」

『そうですね』

子どもかよ。

でもそんな深澤さんを見てると下らなくてどうでもよくて。

自然に笑みが零れる。

「酷いなぁAちゃん」

『深澤さん店大丈夫なんですか。』

「全然大丈夫じゃないんだけどね」

“ほっとけないじゃん”と、わたしの頭を撫でながら深澤さんは言った。

弱ってる時、こんな言葉でさえ救いになるから不思議だ。

『ほんと、迷惑かけちゃってすみません。』

「ん。ひとまずご飯は食べような」

『はい。』

「照には俺が連絡しとくから」

『え、いや、大丈夫です！』

とりあえず安静に、と言うことで部屋に向かう。

部屋に入った瞬間驚いた深澤さんの顔は忘れられない。

わたしが知らない、“誰か”の部屋。

「……もう少し照に甘えてもいんじゃない？」

その提案に首を振ったわたしを、静かに宥めるような優しい口調。

それでも、わたしは嫌だった。

『いいです。甘えるような関係じゃないし。』

「……」

『わたしは、ここに居られれば、いい…』

これ以上変な事を言って、ひかるさんに嫌われたら。

そう思っただけで軽く死ねる。

押し黙ってしまった深澤さんを見て、わたしはベッドに入る。

綺麗にハンガーに掛けてある服を見た。

わたしに似合わない服。

わたしのじゃない、服。