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「ねぇ」
みやび、と呼ばれた人が声を上げた。
ひかるさんはもう一つのレジ袋から色々取り出しつつ、いい加減な返事をする。
「あたしその子紹介されてないんだけど」
「何でお前に紹介しなきゃなんねぇの?」
「てか、一緒に住んでんだ?」
「お前うるさい」
ひかるさんの機嫌は、見る見るうちに悪くなっていく。
雅さんはきっとそれに気付いてる筈なのに、わざと怒らせようとしている。
「そんな服まで着せて」
「……」
「よっぽどお気に入りなんだね」
ドンッ!と、リビング中に響いた音に腰が抜けるかと思った。
静まり返るリビング。
テーブルを叩いたひかるさんを、頬杖つきながら見てる雅さん。
ひかるさんが、怒った。
……わたしを殴る前の怒った翔太は、物を割ったり叩いたり大きな音を出す人だった。
それが妙にフラッシュバックして、ひかるさんと翔太が被って、心がモヤっとする。
嫌だ。
怒らないで。
嫌だ。
嫌いにならないで。
『……ひかる、さん…』
その声反応したのはひかるさんだけじゃなく、雅さんもだった。
だけど今はそんな事どうだっていい。
今までこんな風に怒ったことを見たことなかったから、わたしの知らないひかるさんがそこにいるみたいで、嫌だった。
『ひかるさん、っお…怒らないで…』
「怒って、ない」
間抜けな顔したわたしに駆け寄り、いつもみたいに頭をゆっくり撫でてくれた。
優しい優しい手つき。
それに、いくらか安心をした。
良かった、いつものひかるさんだ。
「ごめんな。お前はもう部屋行って寝てな?コイツ追い出してから、部屋行くから。」
黙って首を縦に振る。
視線を感じでチラリと雅さんを見た。
「あたし。酒井雅っていうんだけど」
『…は、はぁ、』
「何だっけ、名前」
『……A…神谷、Aです』
ふーんって呟いた雅さんを見つつ、ひかるさんに促され部屋に戻ろうとした。
すると、すぐさま雅さんはソファから立ち上がりわたしに近付いてくる。
雅さんの綺麗な顔がいつの間にかすぐ目の前にあって、ひゅっと息を呑んだ。
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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時