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ーー夜明け前、薄暗い寝室。


ゆっくりと重い瞼を上げた。

隣には暖かな温もり。

穏やかな寝息が聞こえる。


起こさないように、そっと身体を起こし確かな温もりを求めるようにひかるさんの頬に手のひらを添えた。

幾筋の涙の跡を指で辿る。


穏やかな寝顔と、その涙の跡がひどく不釣り合いだと思った。


…こんな事をして、誰も幸せになんかなれない。


ひかるさんは目覚めた後きっと酷く自分を責める。

そういう人だって、分かってる。


でもね、わたし、後悔はしてないよ。



ひかるさん、大好きだよ。



伝える事はもうないけれど、貴方に抱かれた事はずっと忘れない。


ずっと側に居るって言ってくれたの、嘘でも嬉しかった。



『ごめんね…』



“愛してない”



『愛してる、』



きっとこれから、痛くて、苦しくて、堪らなく愛しく想うこの感情は、貴方にだけ感じるもの。



…貴方が苦しむのなら。



これ以上、苦しむのなら。



『愛してるっ……、』



さよなら、だね。









最低限の荷物をまとめて、まだ日も昇らない頃、わたしはマンションを出た。

合い鍵はキッチンのテーブルに置いて…やっぱりやめた。


手紙を残そうか迷ったけど、結局それもやめた。

だって今さらひかるさんに言える言葉なんてないもん。


勝手に側に居るって言っておきながら、勝手に逃げる。

どう言い訳しても、それが事実。



マンションを振り返る。

最後だから、しっかり目に焼き付けよう。

貴方と居た証を。

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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