「愛してない」2 (ページ41)

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電話を切ったひかるさんは、携帯片手にしばらくその場に立ち尽くしていた。

焦燥感が募る。

心臓が嫌な音を立てている。

早くここから離れたくて、リビングに戻ろうとしたらギシ、と床が鳴る。

しまったと思った時にはもう遅く、ひかるさんが寝室から出てわたしの目の前に立っていた。

「…A」

『…あ、ご、ごめんなさ…』

目を合わせられなくて、上手く言葉も紡げなくて。

『も、毛布かけてくれて……あの、お礼を……』

「聞いてた？」

『……ごめんなさい。』

言い訳にもならなかった。

苦しい。

喉に何かが引っ掛かってるみたいに息が出来ない。

ひかるさん。

どうしてそんな顔するの。

わたしが居るのに。

“一人”みたいな、そんな顔しないで。

「…ごめん。」

苦しげにそう呟いた。

どうして謝るのか分からなかった。

謝られちゃ、どうしようもないじゃん。

『ひかるさん……』

痛そうに顔を歪めて、まるで泣かないように我慢しているみたい。

……初めて。

初めて誰かのために、強くなりたいと思った。

この人の弱いとこ、全部全部わたしが受け止めて。

この人のために在り続けたいと思った。

ひかるさんの頬に手のひらを添えた。

ピクリと震える肩が愛しい。

ひかるさんがいつかやってくれたみたいに、優しく優しく撫でる。

「……A…っ、」

わたしの手のひらを握って、縋るみたいに、唇に寄せてくる。

『わたしが……』

それでもそれでもって。

『ひかるさんの側に居るから、』

貴方に願うの。

...