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痛そうなひかるさんの表情が、わたしを焦らせる。

やめて。

そんな顔しないでよ。

わたしだよ?


ひかるさんの側に居るのは、わたしだよ?

さくのさんじゃない。


だからお願い。

そんな思い詰めたような顔、しないで。


「…A、俺は」

『今日、大学のあとバイトなんで…!』

「……」

『……行って、来ます』

「……ん、俺も、行く」


言葉を遮ったのは、わざとだよ。

だってきっと、貴方はわたしの気持ちに応えてなんかくれない。


さっきもそれを言おうとしたんだよね?


迷惑な女でごめんね。


でも、こんなわがままな気持ちを突き通さなきゃ、貴方はわたしから離れて行ってしまう。

わたしはそれが、何より怖い。




バイトは続けている。

深澤さんとも、あの日以降あの話についての会話はしていない。


それが正しいと思ったんだ。

過去を聞いて、その重さを知って。


どうしてわたしがひかるさんを救えるなんて思ったんだろう。


わたしが出来る事って、精々“さくのさん”の代わりになる事くらい。


……代わり。


『自分で言ってて傷付くなんて世話ないや…』


痺れ出した鼻の奥を押さえて、目頭も押さえる。

振り切るように、ブンブンと頭を振った。


泣いちゃダメ。

わたしが強くなると決めた。

ひかるさんを支えると決めた。


独りぼっちだった昔のひかるさんを支えたさくのさんに反抗しているって分かっているけれど、初めて負けたくないって、思った。

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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