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『ひかるさん、』

「ん?」

『わがまま、言って、いい…?』


精一杯の勇気を振り絞ってそう言うと、ひかるさんはライトブラウンの瞳を見開いた。

断られたら、もう二度と言わない。

ひかるさんはしばらくわたしの顔を黙って見つめた後、微かに吐息を吐き出して笑った。


「いいよ、何?」

『…………たい』

「ん?」

『ご飯……一緒に食べたい、』


どんなに遅い時間でもいいから。

ひかるさんを待っていたい。


『ひかるさんの事を……もっと、よく、知りたい、です。』


知りたい。

本当に、ただ、知りたくて。

心が、いつもひかるさんを求めてる。

わたしに優しくしてくれた人。

わたしの居場所をくれた人。

それだけって想うかもしれないけど、ただ知って、近付きたいと思って。


「……A」


ひかるさんが、掠れた声で呟いた。

頭を撫でてくれていた手のひらが、わたしの目元をなぞる。

気持ち良くて、その手のひらに頬を擦り寄せた。


「…ご飯、俺と一緒ならちゃんと食べる?」

『食べる…!』

「遅くなる時はほんと遅いぞ?」

『いい!』

「無理だけはすんな。」

『してないよ…?』


してない。

だって、わたしが望んだもの。

もう独りは嫌だ。

こんな大きな場所で、独りは嫌だ。

すがるようにひかるさんを見つめる。


「……分かった」

『……ぇ、』

「なるべく、早く帰るようにするから。しっかり食べて、ちゃんと治せよ」

『はい。』

「明日はバイト休め。ふっかには言っとくから。」

『だ、大丈夫、』

「だーめ」


コツンと、額を小突かれる。

それと共に上から降ってきたのは、呆れた声だった。


「俺明日久々に休みなんだけど」

『え?』

「それでも無理して行きたい?」

『い、行かない!』


こんな口車にスイスイ乗せられて、わたしってばなんて単純なんだろう。

そんなわたしを見て笑った貴方の、背負って来た過去だとか、全て知りたいだなんて言ったら、どう思うんだろう?

また、わたしを突き放すのだろうか。


“愛してない”


そう言って、またわたしに触れるんだろうか。

愛おしいそうな、泣き出してしまいそうな、そんな瞳で。


...

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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