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『ほんとは、気付きたくなかったし…知らない振りだってしたかったのに……』
こんなにも、こんなにも、ひかるさんを好きになってしまった。
不毛だと分かっていた。
あの人を好きになる事は、きっと自分が傷付く事だと知っていた。
あの人がわたしを誰かに被らせている事も、愛さないと言ってわたしを通して誰かを愛してる事も気付いてて。
だから、笑ってたのに。
「……アイツが」
雅さんが、苦しそうな顔して声を出した。
聞きたくないと思ってるのに、聞きたいなんて。
ひかるさんの事、知りたいなんて。
貴方がそんなに哀しんでる理由が、知りたいって。
わたしはどうしようもなく哀しいのに、そう思ってしまったの。
「アイツが苦しんでる過去を、あたしは知ってるから」
『……』
「誰を傷付けてでも、アイツを救いたいと思ってる。……ごめん、でも、これがアイツのためになる一歩になるなら、あたしは、アンタだって利用する。」
『……、』
「きっと、辰哉だって同じだから。」
雅さんは深く息を吸った。
その姿を見て、もう決意した瞳を見て、聞きたくないなんて言えなかった。
雅さんが、何をどう見てわたしを認めてくれたのかなんて分からない。
頼んでもいないし、そんな身勝手なって思う。
でも、きっと迷ってるから、わたしは逃げないで雅さんの言葉を待ってんだ。
少しでも知りたいと思ったから、ここから立ち去る事も出来ないんだ。
なんて馬鹿なんだろう。
これを聞いたらもう、後戻り出来なくなるって分かってるのに。
「照ね。」
その綺麗な唇から紡がれる呪いの言葉に。
果たして、わたしは耐えられるんだろうか。
「実のお姉さんの事、愛してたの。」
...
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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時