『 Fly so high!! 』

Limit 54. ページ8

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最初に“おかしい”と感じ取れたのは、十歳の時より確実に前だった。
八歳くらいだろうか──だが、当時の自分はそれを気のせいだと思ったのだろう。

何も聞かされないまま、二年の時が過ぎて十歳になっていた。



『──A』

『なあに、お父さん?』



当時は一般的な家庭で、それこそ幸せに暮らしていたAには両親も居た。

ある日、夕食をとってる時にふと父親に呼びかけられて
食事の手を止めた彼女は、何の疑問も持たずに言葉の先を促していた。

……それから返って来た答えは、彼女にとって残酷なものであった。



『…………A、もう空を夢見るのは止めなさい』

『…………??』



唐突な言葉に、理解の追いつかなかったAはきょとんとした顔つきを見せる。

──実は幼い頃から、彼女はこの世界の空を駆け巡る夢を見ていたのだ。
この世界には、まだ空を飛ぶ技術が残されていない。


だからその夢を自らの手で叶えたい。

そう思った彼女は、この夢を叶えてくれるのに何よりも手っ取り早いのが
“機械”なのだと考え、教師等から力を借りてそれらを学んでいた。



『……お父さん、どういう事?』



夢のために学ぶ自分を、最初に応援してくれたのは父親と母親だ。
なのに今は、それを否定されようとしているのか。

そう不安を抱いたAが、眉を寄せながら問いかけると。



『──私達がこの世界で生きられる時間は、もう残り少ない。
この残り少ない時間を、Aにはもっと有意義に使ってもらいたいんだ』

『生きられる時間が無いって、どういう意味? どうしてそうなるの?』



ただただこれまで平穏に暮らして来た筈なのに、突然に何か。
この家族は、誰かに命を狙われているとでも言うのか。

思わず椅子から立ち上がったAが問い詰めるようにして言うのに
困った両親は、互いから答えを見つけるかのように顔を見合わせたが──

やがて、母親の方が徐に口を開いて、彼女に説明をした。



『……Aが六つの時にね、世界中に報道されたの。嘘なんかじゃないのよ。
この世界の寿命は残り短くて──後数年の内に、崩れてしまうんですって』

『はあ…………?』



──世界が崩れる? なんて非現実的な話だ。

でもそれに対して、世界中の大人達が誰も疑問を唱えて居ないという事は
やはりそれは、間違いなく事実だという事なのだろうか。

少なくとも……これは現実の話だ。

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