『 Fly so high!! 』

Limit 57. ページ5

全員が終わるまで休息をとっていると、次に作業を終えた白羽が
機械から降りて、Aの座るベンチに腰掛けて隣り合った。

彼もまた、目の前に並ぶ五つの機械を順番に並べると
小さく微笑みながら彼女に話しかける。



「──サルバシオン、全部大丈夫そうだね」



端から聞けば、訳の分からない単語を主語にした白羽の声に
Aはその言葉の意味を理解して、頷きを返している。



「後は残りの一機が、上手く行くと良いんだけど……」



……実はハンググライダーに似た機械は、彼らの中でまた別の名を持っていた。

最初の一機を作り終えた時、皆で協力して作ったは良いが、名前が無ければこの先
機械のことを示して話をするのに困るだろうと、全員で考えたのだ。

そうして付いた名が、“サルバシオン･アーラ”──救いの翼。



「上手く行くさ。俺達が力を合わせればな」



続いて調整を終えた俊也がやって来て、呟いたAの言葉に答える。

それは信頼と確信をもった彼なりの答えで、
にっこりと笑った白羽が同意するようにして大きく頷かれた。



「そうじゃなくても、また一から作り直す余裕はまだあるよ」

「……でも、そうした分だけ、空を飛ぶ時間は少なくなってしまう」



対して物憂げに俯きながら言ったのは、A。
──最後の一機は、“彼女の分”の一機だ。

もちろん、ここと同じ建物内に住む他の仲間達も大勢居るので
共用する事にはなるが、彼ら六人が中心となって作り上げる翼。

所有権もまた、彼ら六人に委ねられていた。





〜･〜･〜





最初の一号機は、彼らをこの場に集める原因となった翔の物という事になった。
その事実があって、翔は他の五人からも多大な信頼を寄せられているのだ。

そして次の二号機を誰の物にするかという事で、少々問題が起こった。

本人達は別に誰の物になっても問題はないと思っていたが、
そう思っていたからこそ誰の物にするのか困ってしまったのだ。



『……私のは、最後に作ったサルバシオンで良いよ』



悩んだところで初めに口火を切ったのは、Aだった。

今回は自分のでなくていい、どころか最後の物で良い、という言葉に
他の五人は驚いたように目を見開いていたのを、彼女自身はよく覚えている。



『良いのか。六機全てを作り終えるのに、どれだけ掛かるかわからないんだぞ?』

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