『 Fly so high!! 』

Limit 49. ページ13

両親が夢を見る自分を応援してくれていたのは、

世界が生き続ける余裕があったからこそで──
そうでなくなった今、この先を考えようともしない娘なんて邪魔者でしかない。

それはそうか、もし自分が両親だったなら同じように思うかもしれないな。



『(……それでもやっぱり、諦めたくないよ)』



また目の奥が熱くなってくるのを堪えながら、ぎゅっと握りしめた鞄の口を開く。
中身を覗くと、真っ先に視界に入ったのは幾つもの資料。

──Aがこれまで学んできた、機械に関する物の全てだった。
だが真に全てを理解するには、まだまだこれだけでは足りない。

しかし、その何枚かの紙を手に取ったAは、ふと疑問を以て首を傾げる。



『……お父さん、どうしてこんな物を入れてくれたんだろう……』



“もう夢見るのは止めろ”──父親は確かに、彼女にそう言った。

そう言う程なら、こんな邪魔な紙は疾うに破り捨てられてしまっていても
おかしくはなかったと思うのだが。



『…………』



でも……何故だろう、父親も母親も傍には居ないし、もう戻れない筈なのに
鞄に詰め込んである物は、自分に対しての思いが詰め込まれている気がして

何だか心が温かくなってくるのを感じる。

時間は幾らも残されていない、それなのに両親は
まるで、自分の夢を未だに支えてくれているかのようだ。



『! …………そっか……そういう事だったんだ』



両親へ思いを巡らせて、はたと気づいたAは再び顔を上げて空を見つめた。
あの会話は全て、全部がわざとだったのだと、ようやくわかったのだ。

家での話と、鞄に大切に詰め込まれた道具──全く正反対な言動に
彼女は父母の“建前”と“本音”を同時に垣間見た気がした。

──鞄の中には、資料と共に工具箱も納められていた。





〜･〜･〜





『…………ん、』



ふと目を開いたAは、石段の上に横になっていた体を起こして辺りを見渡す。
……いつの間にか、寝てしまっていたようだ。

起きたのは丁度朝の時間だったようで、──世界が直に終わる事を知っているからか
彼女と同じようにこの展望台で空を眺めながら眠っている者も多かった。


この世界に夕方の空や夜の空という色の変化はないが、時間の概念はある。
もちろん、頭上には太陽があるし、太陽は時間と共にゆっくりと空を動いていた。

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