Limit 51. ページ11
……ここからは決して、Aが知る事の無い話。
家に残った父と母の間で、重たい沈黙が訪れた。
『──本当にあれだけで大丈夫かしら、あの子……』
パタリと閉まった玄関の扉をじっと見つめながら
家を追い出してしまった娘の行く末を憂いて、ぽつりと呟いた母親。
『大丈夫さ。うちの娘は君に似て逞しく、賢い子だからね』
椅子に座り直した父親の表情は、僅かに寂しさを残しながらも穏やかだった。
つい先ほどまで、娘を追い出さんと容赦なく言い放っていたとは思えない程に。
──これが“世界が崩れる”と宣言される前なら、有り得ない光景だった。
追い出そうとした後もそんな表情が許されるのは、宣言された後だからこそだ。
その意味を、父親が“それに、”と続けて声に放つ。
『……世界の寿命がもう長くはないとわかった近年では
あのような子供ですら、自立していく者も居ると言うじゃないか』
世界の寿命が宣言されてから四年も経てば、周囲の異変に気づく子供達は
少なくなかった。きっと我が娘もそうだったに違いないと、この両親も思っている。
それでも言わなかったのは──両親自身が不安をもっていたからだ。
世界の終わりなど、誰もが経験のない事に対してどうすれば良いのかわからず
先ほどのように、娘を自ら突き放すなど考えられはしなかった。
だが、二人もようやく落ち着きを取り戻して来たのか……決意を固めていたのだ。
『もしもまだ、世界が私達を許すのなら──娘がそんな子供達と出会える
運命にも期待しよう。外に居た方が、あの子の世界も更に広がって行く筈だ』
──既に狭まって行っている世界だが、こんな小さな家に居続けるよりも
外に出して、より夢の実現に近づける可能性を広げた方が本人にとっても良い筈。
『運命が巡り合えば、あるいは私達が気づかない内に空も飛んでいるかもしれない』
だから、二人はわざわざあのような形で自らの娘を遠ざけたのだった。
夢をもち続けると言い切ってくれた娘なら、きっと強く生きてくれる筈だと。
『……そんな事があるのなら、一度で良いからこの目で見てみたいわ』
そう、胸元のロケットを握りしめながら微笑む母親の脳裏には
まだ目にしていない筈の、娘が大空を飛ぶ姿が過った。
──もう、Aは戻ってこない──仮に本人が
それを望むことがあったとしても、どちらにしろ戻っては来られないだろう。
時間は確実に、刻一刻と過ぎて行くのだから。
〜・〜・〜
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フェイル(プロフ) - ゆーふぉーさん» 聞いてないですよねえ! (白々しい。) 兄だけが、物語の最初で出て来た五人の存在を誰よりも早く知っていたことになりますね。 (2015年9月22日 1時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ヒビキさん» コメントありがとうございます! はい、その通りでございます! 話が半ばに差し掛かったところで、ようやくその正体がわかりましたね! (2015年9月22日 1時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーふぉー(プロフ) - お兄さんなんて聞いてないですよΣ(゚Д゚)思った以上に複雑ですね (2015年9月21日 22時) (レス) id: 7b18582839 (このIDを非表示/違反報告)
ヒビキ(プロフ) - 違っていたら申し訳ないんですけど、タイトルの絵に描かれている左側の男の子はもしかして主人公の兄である凛空ですか? (2015年9月20日 20時) (レス) id: b7ba2d1d16 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ゆーふぉーさん» 書籍は流石に言い過ぎです!!!! 英語ですかー……あれは暗記教科のようなものな上、継続的な勉強になりますからかなりしんどいですよね;; (2015年9月13日 16時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェイル | 作成日時:2015年8月30日 0時