第35話 ページ36
。
「……………………」
無言で帰路を歩いた
ただひたすらさっきの話を聞かれたのではと不安だけが募る
別にやましいとかそういう訳では無いけど
とても申し訳ない事をしたという感情が渦巻く
きっと過剰反応し過ぎなんだろうなって
分かってるけど
ただベンさんから聞いた“あの話”が
“聞いてはいけなかったのでは”とずっと思ってる
だから“知ってしまった事”をずっと罪悪感を抱いている
ずっとそんな事を考えている
「音彩。どうだった?初めてのバイトとやらは」
私がずっと無言のまま歩いているのに気にしたシャンクスが声をかけてくれる
「あ。うん……良く出来た方だと思う…覚えることはまだ沢山あるけれど」
「そうか。なら明日も頑張らないとな」
「うん………」
歯切れの悪い返事ばかりしてしまう。隠し事をしてる感じが見え見えだよね、これじゃあ
言うべきかな。ベンさんに聞いたよって
別にベンさんには誰にも言うななんて言われてはいないし
でもそんな傷を抉るようなこと、一々言うべきこと?
別に言わなくたって……
ああもう!!ごちゃごちゃと考えすぎてまとまらない!!
頭の中が整理付かず余計な考えや思い込みを産む
まずネガティブになりすぎだよ
後ろめたさなんて私が持つことじゃない…
「そういえば」
ふとシャンクスの方から口が開かれる
「あ…なに?」
酒場でのことかな…
何を言われるのだとつい見構える
「歌は歌ったのか?」
「え!?……ううん。歌ってないよ」
つい嘘をついた
なんだか知られたくなくて
「そうか?さっき酒場から聞こえてきたあの綺麗な声は、お前じゃなかったのか?」
「…………………………」
足を止めた
(…聞かれていた)
だとしたらさっきの話も全部。全部。全部
聞かれていたの?
なんで黙ってたの?居たよってなんで言ってくれなかったの?
「…なんで黙ってたの。居たなら声かけてくれればいいじゃない」
「声を掛けたらお前は歌わないだろう?」
「…だからって」
なんで
「そうだ。今度俺たちにも聞かせてくれよ。歌を」
だから
「やだよ。私上手じゃないし…」
「何言ってるんだ上手いだろ。あの親子には聞かせてたじゃないか」
だから
「嫌だってば!!!!やめてよ!!!!!」
「!…………」
「…あ…………………」
私何言った…?
「…ごめん………………」
小さく呟いた謝罪。そのまま駆け出して船の甲板に向かい、自室へ向かった
ホントやだ
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