第34話 ページ35
。
歌い終わると2人は拍手を送ってくれた
慣れない今の状況に恥ずかしくなり、そそくさとマイクを置いてカウンターに腰かけた
「やっぱり貴方歌が上手いわ!」
「ありがとうございます……」
お世辞でも嬉しい…くぅ…っ
「俺たちしか聞かないのは本当に勿体ないなぁ」
なんて店長さんは言ってくれるけれど。流石にもう大勢の前では歌いたくないです。申し訳ないけど
それこそメンタル溶けると思うんだ。スライムのように…
「でもお2人に聞いてもらえて嬉しいので十分です」
「私は聞けて嬉しいけれど…そうだ。彼等には聞かせてあげないの?」
と言われて。一瞬誰のことなのか分からなくて首を傾げる
「あ。いや、彼らには…」
シャンクス達にか……
聞かせずらい云々の前に歌うのめっちゃ恥ずかしいからまだ無理かなぁ…
現に私の世界で仲良くなった友人にだってカラオケ行く前、ヒトカラして必死にカラオケの練習してたくらいだし…
「船長さん達、きっと聴きたがると思うんだけど?」
「あはは。どう、かな……」
それにあの話聞いたあとだと歌えない
いやそもそも歌うつもりはないんだけどさ……
「それに。聴きたくないと思う。彼らは…」
私が勝手にそう思ってるだけなのは分かってるんだけど
でも私は彼らの“娘”という訳じゃないし。ただの居候
私もそこまで図々しくするつもりはない。そんなデリカシーの無いことしたくないし
話を聞く前はちょっと失礼なことしてたかもだけど…
「彼等にはとある事情があって辛いことがあったから。私みたいな小娘の歌なんて聴きたいなんてとてもじゃないけど……私も歌いたくない、し…」
「そんな事ないと思うけれど…」
ニコラさんは優しいからそう言ってくれる。店長さんも
そんな会話をしていた時だった
「音彩」
声をかけられた。ふいに
振り返ると入口にシャンクスが立っていた
「迎えに来た。帰ろう?」
「……あ……………うん……」
どんと心臓が重くなる
“いつからそこにいたの?”
“話は聞かれていた?”
鼓動はどんどん早くなり、思考はただそれだけを考えた
「世話になったな。旦那さん。また明日からもよろしく頼むよ」
「ああ勿論だよ!こちとら助かってばかりだ!」
「また明日ね!音彩」
「………………はい…また、明日……」
3人の話声が遠く感じる
耳鳴りがしてるような気がして
早く自分の部屋に戻りたい
怖くなった
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