第33話 ページ34
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時は変わりPM18:00
「つ、疲れた、た……」
足が棒のようになり生まれたての小鹿のようにガックガクになっていた
「お疲れ様音彩!はい、どうぞ」
「ニコラ…さん……ありがとうございま…」
私のためにと入れてくれたオレンジジュースを1杯飲み、ふぅと息をついた
バーカウンターに腰かけさせてもらい。一休みする
「どう?仕事は」
「大変だけど楽しいです」
「そうか。それなら良かった!」
店長さんもニコラさんも嬉しそうにしてくれた。最初は無理なお願いと分かっていて働くのは難しいかもしれないと思ったけれど。突然の申し出に快く了承をしてくれたお2人には感謝しかない
「そうだ。音彩。歌わない?1曲」
「え。あーいや……」
また歌うのかぁ…流石に疲れてるしちょっとなぁと思っているとニコラさんに
「もしかして、歌を歌うの嫌いだった?」
と聞かれた。めちゃくちゃ心配そうな顔をされてる
「いやそうじゃなくて!嫌いではないんですけど…人前で歌うのが凄く苦手で……ちょっと怖気付いちゃうというか…」
「なるほどね。…でもほら。見て?今は私たちしかいないわ?」
いつもなら9時頃までやるらしいのだけれど。今日は週に1回の時間短縮の日らしく、早めに店仕舞いをしたらしい
あと私の初出勤ということもあり、調整してくれたとか
本当に有難い……
「うーん……お2人にだけなら、まぁ…」
そう言うとニコラさんは嬉しそうに笑った
そして
「良かったわ!貴方の歌声とても好きだから嬉しい!」
そう言ってくれた
(そんな事言われたの。2回目だ)
素直に嬉しくて顔が綻ぶ
自然と口角が上がってしまう
「じゃあちょっと…自分の歌では無いんだけど。よく聴いてる好きなアーティストの曲を……」
言うてアニソンなんだけどさ
ニコラさんにマイクを渡され、ステージがあるコーナーに立つ
バーカウンターに店長さんとニコラさんが腰掛けて期待の眼差しを向けてくれる
(その眼差しはめちゃくちゃ緊張するのですが…)
マイクを持ち、スマホを取り出す
歌う曲のイントロを流してすぅっと息を吸う
“仮初まみれの日常だけど”
何となく今の私の状況に合うような
そんな歌を“チョイス”した
店内には私の歌声だけが響いて。ただひたすら詞を紡いだ
2人しかいないこの空間で
だけど私は知らない
この2人以外にもう1人。私の歌を聞いている人物がいたことを
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