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特級呪霊が目の前に現れた時を遥かに凌駕する恐怖が全身を覆っていく。

見た目は虎杖くんのまま。なのに人格が宿儺に変わっただけでこんなにも恐怖心が揺さぶられるなんて思ってもみなかった。

特級呪霊も宿儺のせいで私を担いだまま身動きを取らない。そんな中、宿儺が特級の肩をポンポンッと叩きながら「少し待て、今考えてる。」と声をかけた。

悠仁くんは宿儺が特級呪霊を倒す事が目的で宿儺と入れ替わった。が、宿儺からは「ガキ共を殺すぞ。」という私達が想像していなかった言葉が漏れた。



「あぁ、お前の事を忘れていたな。」
「……え?」
「お前はなかなか面白い呪力を持っているからな、最後に取っておいてやろう。」



そう言って背を向けた宿儺に特級呪霊が攻撃を仕掛けた瞬間、吹き飛んだ悠仁くんの手を直した宿儺が片手で軽々受け止めた。

私達があんなにも苦戦して防ぐ事すらできなかった攻撃をただ手を前に伸ばしただけで受け止められる意味が分からない。理解が追い付かない。

呪いの王に圧倒されている内に私の身体は特級呪霊の肩から宿儺の後ろへと移動していて、宿儺は特級呪霊の頭を掴んで橋にめり込ませ、続く攻撃で橋が一気に崩れ落ちる。

私が移動させられてた場所は崩れてもないしヒビも入ってない。が、宿儺が特急呪霊を攻撃する度に床にも壁にも振動が走ってそれが頭の傷に響く。目に流れてくる血を拭いながら必死に宿儺と特級呪霊がいる床下を覗き込んだ。



「は?」



何が起こったのか理解できなくてただ息が漏れるだけの声が出た。

さっきまで元気よく私を担いでいた呪霊の姿は切り刻まれていて見るも無残な姿に変わっていた。

宿儺が悠仁くんに何か怒りながら叫んでいるけど特級呪霊の攻撃で頭だけじゃなくて耳にまで障害が出ているみたいでよく聞こえない。

ふっと生得領域が閉じて元あった少年院の姿へと戻った瞬間、橋にいた私と橋下にいた宿儺が同じ位置になって、怪我が悪化しないように座り込んでいた私を宿儺が見下ろす。



「俺を睨み付けるとは良い度胸だな。」
「特級呪霊は倒したんだから用はもうないでしょ、悠仁くんに変わってよ。」



私の発言で機嫌を損ねた宿儺の腕がゆっくりと私に伸びる。

そう、それでいい。

触れた瞬間人間用も呪霊用も関係なく全部の呪力を乗せたフェロモンを宿儺に流し込む。最悪私が宿儺に取り込まれたとしても力を制御できるくらいには役に立てる。

09:血染の口付→←08:恐怖の対象



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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_  
作成日時:2021年2月2日 19時

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