06:油断の代償 ページ14
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夜蛾学長に頼み込んで朝6時頃に開けてもらった訓練場でゴロゴロと寝転ぶ。
何日訓練を積んでも全くフェロモンは収まらないし制御もできない。ただ分かったことはあった。
フェロモンのせいで人からあんなに視線を集めているなら呪霊がいつ出てきてもおかしくはない。が、高専を出ても私の前に呪霊が現れることはない。
たぶんだけど私の中には対呪霊用と対人間用の2つのフェロモンが存在する。
小さい頃から慣れ親しんできた呪霊用のフェロモンの制御は完璧で、人間用のフェロモンだけが制御不可能になっているみたいだ。
「まぁ解決に近づいたってだけか……」
仰向けに寝転んだまま目を瞑る。
10年以上も慣れ親しんで常に生活の一部として存在していた対呪霊用のフェロモンをどうやって制御しているのか私にも分からない。だってあるのが普通でコントロールできるのが普通だったから。
対呪霊用でもいいから今はとりあえずフェロモンのコントロール方法を探し出すのに専念するしかない。
道のりが近づいたような、遠ざかったような、そんな状況に頭が痛くなる。
「う〜ん、」なんて唸りながら目を開くとそこには狗巻先輩の顔があった。
急なことにびっくりして「うわっ!」なんて可愛げのない声が漏らしながら急いで起き上がる。狗巻先輩も私の声に驚いたのか肩をビクッと震わせた。
考えることに没頭しすぎて訓練場に入ってきた事すら気付かなかった。
「狗巻先輩も自主訓練ですか?」
「おかか。」
「じゃあ何で……」
狗巻先輩はそっと手を伸ばして訓練中にできてしまった腕のあざをそっと撫でた。痛みはもうないものの痛々しいあざになっていて見た目だけは痛そうな怪我。
フェロモンが出るのに狗巻先輩の心配そうな表情のせいで動けない。
心配してくれてるんだ、そう察して一気に嬉しさが込み上げてきた。
「狗巻先輩って優しいですよね。」
「ツナマヨ?」
「被害者なのに心配してくれて……」
今はフェロモンのせいで私の事を好きになってるけどその前から優しかったせいで今は倍以上の優しさで接してくれる。みんなのことは好きだけど1番安心できる人かもしれない。
急に抱き着いたり部屋に押しかけたりもしないし。
「安心感あるんですよね。」
そう言って軽く笑った私の視界が一気に切り替わる。
背中には床、目の前には不満げな表情の狗巻先輩がいて、押し倒されたんだと察した。
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時