君のいない街

・ ページ29

大貴「パレード？…なんで？」


慧「…んー、あの日はパレードみんなで見れなかったから。」


本当は、大ちゃんとまた遊びたかっただけ。


もうすぐその時が来るというのは分かっている。


その日だけでいい。ほんの数分でも数十分でもいいんだ。何もかも忘れて、大ちゃんと一緒に純粋に楽しみたいんだ。


大貴「…わかった。聞いてみるね！」


慧「うん」


・



・


朝起きて、つまらない学校に行って、そのまま病院に向かう。


病室のドアを開けて、こちらを見て笑う彼の姿をみて、



ああ、今日も生きてくれている。とホッとする。


そんな日々に慣れてしまっていた。


でも今日はドアを開けても、笑顔で迎えてくれる君はいなかった。


布団を頭まで被り、少し震えている。


慧「大ちゃん？」


名前を呼び、ぽんぽんと布団の塊を叩く。


どうしたらいいのか戸惑っていると、か細い声がした。


大貴「…ごめんいのちゃん」


慧「…えっ？」


大貴「…ダメみたい。」


……だめ、そうか、だめ、なんだ。


俺は、大ちゃんは、もうパレードを見る願いも叶えられないんだ。


悔しい、悲しい。


慧「大ちゃん、出ておいで。」


もさっ、と素直に顔を出した大ちゃんの目は少し赤くて、きっとまた堪えていたんだろうなって思った。


そんな大ちゃんを抱きしめた。


もうどうしようもないこの感情を、熱すぎるくらいの体温と涙で打ち消そうとした。


大貴「いのちゃん、ごめん…ごめんっ…」


行きたかった、本当にごめんね、大ちゃんはそれを全身で伝えてくれている。涙を流している。


慧「俺こそ、…ごめんね。」


一粒の涙が頬をつたった。

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