＊ ページ18
阿部は、ずっと佐久間に泣きついていた。
｢兄｣の事を忘れたくない、けど、もしこのまま眠って、起きてまた忘れてしまったら、
きっと｢兄｣は傷付いて、それを隠すように笑ってしまうから。
こういう時何かカッコイイ事を言えたらいいのだけれども。
生憎佐久間にそのようなボキャブラリーは持ち合わせておらず。
佐久間は涙でぐちゃぐちゃになった阿部の顔を拭いて、そっと頭を撫でてやるので精一杯だった。
阿部は、寝る事を拒むようにして、結局倒れるように眠ってしまった。
幼い頃そうしていたように、2人で1つのベッドで眠った。
淡い期待を抱いていた。
そう、願っていた。
＊
阿部｢…うわあ！？｣
鳩尾に強烈な蹴りが入った事で強制的に目を覚まされた。
佐久間｢朝から蹴りは痛いし吐く…｣
阿部｢何で俺｢佐久間｣のベッドで寝てるの！？｣
その一言で昨夜の淡い期待は打ち砕かれた。
一瞬の間の後、佐久間はまたヘラり、と笑うと
佐久間｢昨日｢ごめんなさい〜｣って泣きついてきたくせに！覚えてないなんて言わせないぞ？｣
阿部｢…え、俺もしかして｢護衛つける｣って言った…？｣
佐久間｢言った！言ったぞ！覚えてないからつけないはなしだからな！｣
阿部｢…いや、流石にそれで｢つけない｣は自分でも勝手だと思うから、うん…｣
佐久間｢はいじゃあそういう訳でふっかに報告しに行ってね〜、｢あべちゃん｣｣
阿部｢はい…｣
阿部が部屋を出た後、佐久間はベットに座り浅く息を吐くと、ネックレスを外した。
ただ声を押し殺して泣く佐久間に、｢相棒｣はいつものように頭を撫でた。
どこかで期待していた。
またあの頃のように｢兄ちゃん｣って呼び続けてくれる、って。
昨夜のあれは｢夢｣だったのだろうか。
2度と叶うはずないと思っていた｢夢｣だ。
そう、これはきっと、神様がくれたたった1度の｢夢｣だったんだ。
…そう、思わないと自分の心が保てなかった。
佐久間｢…ごめんね、ありがとう｣
｢相棒｣は慣れている、とでも言いたげに彼の背中を優しく叩く。
佐久間はネックレスを着けると、目を洗い、鏡の前で口角を上げる。
大丈夫、今日もちゃんと笑えている。
阿部の為に、彼を自らが罪悪感に追い込まない為に、
佐久間自身の感情は閉じ込めて、彼は笑う。
それでもまた昨日のように思い出して、罪悪感と恐怖に彼が苛まれるのであれば、
その時は、佐久間も｢お兄ちゃん｣として、阿部の記憶に甘んじて、精一杯励ますと。
彼は頬を1つ叩くと、部屋を出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1001人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みさこ(プロフ) - ダテ様の「ラウールは預かったメール来た」のセリフ好きです (2020年11月14日 5時) (
レス) id: 96340430ed (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございます！とても楽しく読ませていただきました！これからも頑張って下さい！ (2020年2月13日 11時) (レス) id: 25ea824704 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんたぬお(；´_ゝ`)(プロフ) - 本当に好きな作品で夜寝る前の日課になっています笑 差し支えなければリクエストの方をさせて頂きたいのですが、緑さんの力が暴走して、兄のことは覚えているのに自分がS隊であること、そしてS隊の皆のことを一時的に忘れてしまう、みたいなお話が見てみたいです…！ (2020年2月12日 22時) (レス) id: e589be5cc6 (このIDを非表示/違反報告)
はら(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いています！リクエストさせて頂きたいのですが、康二が弱ってたりピンチな所を助けるようなお話が読みたいです。目黒が特に康二に優しかったり必死だったらとても嬉しいです、、、。宜しくお願い致します。 (2020年2月12日 22時) (レス) id: 4b0a14856e (このIDを非表示/違反報告)
いちごみかん。(プロフ) - はじめまして！リクエスト失礼します！今回の涼太くんの話見てて、流行り病の時のゆり組の話がみたくなりました！笑お願いします！これからもがんばってください！ (2020年2月11日 22時) (レス) id: bb0523e0f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湊都 | 作成日時：2020年2月5日 22時
