Freiheit IV (ページ10)

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あの後、どうやって戻ってきたかはわからない。
奇跡的に命は取り留めてくれたものの、いつまでたっても起きる気配のない佐久間に、メンバーは焦燥感を露わにしていた。
…特に。指揮官の彼は。

後目を覚ますかどうか、という佐久間は、彼の部屋で眠り続けていた。
そこに入り、窓のカーテンを開ける。
彼の好きな…アニメのポスターなどが見える。
…何だか、知らない間に配置が色々変わってるなぁ。
あれ、俺に薦めてきたアニメのグッズがない。置く場所なくなったのかな、あんなに買うから…
ぼんやり、そんな事を思いながら、ベッドで眠る包帯だらけの佐久間を見る。

阿部｢…何かさ、変、なんだよ｣
ボソリ、と零れた言葉は、それでも止まる事を知らなかった。
阿部｢佐久間が朝からうるっさいくらいに騒いでさ、照に黙れって怒鳴られててさ、変にうざ絡みしてくるのとか、俺のお皿に自分の嫌いなものこっそり置いてきたりさ、夜急に俺の部屋来てベッド潜り込んできて｢一緒に寝よ？｣なんてふざけたりしてきてさ、そういうのが、ないの、何か…変、なんだよ｣
ボロボロ零れてくる涙は、もう何回目だったかすら覚えていないくらいに流していた。

阿部｢…シンメじゃん。俺たち…入団試験の時から一緒の、シンメでしょ…？大事な相方の事、置いていかないでよ…｣
普段言わない泣き言を零しても、変に茶化してくる声がしない。
あぁ、本当に、変だ。
…寂しい？…多分、寂しい。
阿部｢…馬鹿佐久間、早く起きてよ…｣
ボロボロ流れてくる涙を拭う。
…あぁ、仕事、戻らなきゃ。…やだなぁ、また1人、か。

ねえ、佐久間を、殺さないで(俺はまだ、死にたくない)。
どうかかえして。俺の大事な相方を(弟の元に)。

佐久間｢…………あべ…ちゃん……？｣
微かに聞こえてきた声は、幻聴だったのだろうか。
恐る恐る顔を上げてみると、ここ数日、いや、何十日も見ていなかった彼の瞳が覗いていた。
阿部｢……佐久間……？佐久間、起きたの…？起きたの、本当に…？｣
佐久間｢…あはは、あべちゃん、俺の為に…泣いて、くれたの…？｣

無線に涙混じりに報告を入れる。
夢じゃない、これは現実だ。何回も頬をつねって確かめた。現実だ。
廊下の音が酷く騒がしかった。