Freiheit IV (ページ9)

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＊ページ9

ふわりふわふわ
ちゃぽん、と沈む、｢ここ｣は何処？

深い深い、海のような、静かで暗い場所で。
ただふわふわと、沈んでいた。
思考が停滞するように、ぼーっとして何も考えられない。何、ここ、どこ？
(…あー、俺死んじゃうのかな)
なんて、やだなぁ、でも、動けない。

ふっと思い出したのは｢義弟｣の事で。
1つしか変わらないのに、勉強は俺よりも得意で、俺が知らない事を何でも知っていて、
特に軍学校を出た訳でもないのに、｢軍人になろうかな｣って言った俺に｢じゃあ俺も行く｣って、運動得意じゃないくせに。

でも、S隊の入団試験の時、あの時凄く頼もしかったなぁ。本当、兄ちゃんびっくりしちゃった。
タッグ戦だから入れたのかもね、あの時の照と翔太、本当に強かったもん。
亮平の的確な指示がなかったら、S隊入れてなかったよ。きっと。

…走馬灯なのかなぁ、これ。
やだなぁ、俺、死んじゃうのかな。
死にたくないなぁ、生きたいな。
あべちゃんより、亮平より、先に死にたくないなぁ。
そしたら、ひとりぼっちになっちゃうから。もし思い出した時に、泣いちゃうから。

ふわりふわふわ
するり、と垂れた、｢それ｣は何？

(…糸？)
昔あべちゃんが話してくれた、地獄の蜘蛛の糸のような。暗い海のような場所にそれは落ちてきた。
緑色の、糸。｢義弟｣の瞳の色のような、糸。
これに掴んだら、帰れる？それとも地獄の蜘蛛の糸みたいに、途中で切れちゃうのかな。
…でも

｢しにたく、ないんだ｣

泡となって聞こえない声だった。
それでも、彼は確かにその自分の声を聞き取った。
導かれるようにその細くて頼りなさそうな糸を掴む。
…あぁ、何だか、とても懐かしい｢安心感｣だなぁ。
まるで、亮平みたい。

ふわりふわふわ
あら、あの子はいっちゃったのね。
そりゃそうだ。まだここにくるのは早いだろう。
そうね。｢あの子たち｣はまだここにきちゃいけないもの。

どうか、貴方たちに、沢山の祝福があらん事を。