Freiheit IV (ページ36)

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無線奥から聞こえてくるただならない様子に向井は焦りと恐怖しか感じていなかった。
α国郊外にて別用をこなしていた向井は、事の次第を理解出来ずそのまま切れた無線に、基地に戻ろうとした。

ツー、ツーと聞こえた｢それ｣に立ちどまる。
モールス信号だ。
アサシン時代に覚えたこの信号をちゃんと知っているのは、S隊の中で1人しか知らない。
向井｢…めめ？｣
いつもの無線の回線とは違う回線なのだろう。ザー、という雑音が入り混じる中、聞こえてくる信号に耳を傾ける。

メンバー、全員、嵌められた
基地、封鎖
犯人、A、リーダー、証拠、収集
自分、内部から、貴方、外部から
1週間、期限、メンバー、死ぬ

ざっと血の気が引いた。
つまり、要するに。A隊の隊長に嵌められて、メンバーが全員捕まった…？かとにかく嫌疑をかけられていて、1週間過ぎたら殺される？
そんなの、

了解
集合場所、追って、連絡、欲しい

逸る心臓を抑えながら、信号を送る。
まずは、新しいA隊の隊長の身辺を洗わなければ。
しかし、存在を知られていない目黒はともかく、自分が指名手配にかけられるのも時間の問題だろう。
ならば、そう、｢あれ｣に戻るしかない。
大きく息を、吸って吐く。

殺しましょう、みんなみんな、殺してしまいましょう。
男も女も、大人も子供も、敵も、｢自分自身｣も！
ええ、殺してしまいましょう！
任務遂行の為なら、何でもやりましょう。
それが、｢役割｣なのだから！

着ていたパーカーのフードを被った向井は、いつもと真逆の雰囲気を醸し出していた。
コンマ数秒後、そこに向井の姿はなかった。