Freiheit IV (ページ35)

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Rc26:踊り場で夕影は狂い舞うページ35

(南様リク)

A隊の新しい隊長、というのは、それは酷く狡い手段を使う男であった。
前の、直接喧嘩を売りに来ていた隊長とは違い、根回しをして外堀から追い詰めていく。
果てさて、｢S隊が国家転覆を諮っている｣なんて噂の出処は、どこだろう。なんて聞かなくても、わかっていた。
わかってはいた、が。

目黒｢…｣
強制家宅捜索、とも言えようか、基地内に令状を持ってやって来たα国の王城警察隊とS隊の…特に岩本と佐久間の、口論する声が聞こえていた。
たまたま天井裏でくつろいでいた目黒は、通気口から垣間見えるその光景に口を開いたまま唖然とする事しか出来なかった。

佐久間｢ふざけんな！うちが国家転覆なんか働くわけねーだろ！｣
｢証拠は揃ってんだ！おい！連れていけ！｣
手錠だ。これは目黒は察した。降りない方がいい。
難を逃れる、為じゃない。このままじゃ全員捕まる。
幸い目黒は公式にS隊のメンバーとして発表されていない。潜入捜査員故に、だが、このままここで息を潜めば、警察に怪しまれる事なく無罪の証拠を集める事が出来る。
それに──今、向井は別用で出掛けているのだ。
天井裏を忍び足で駆けていき、深澤の部屋の真上まで来る。

岩本｢ふっか！早く！｣
深澤｢けど！｣
岩本がドアを力づくで開けない様にしているらしい。
通気口から深澤なら気付くであろう微量な音で呼ぶ。
そのまま、S隊内の秘密の暗号を送る。
顔の前で、引き戸を開けるように手を動かす。
『必ず、助けに行く』
深澤はふっ、と笑うと胸の前で親指を立てる。
『了解』

深澤｢照！｣
通気口から目黒が去っていったのを確認し、深澤は天井上を指す。
それだけで察してくれた岩本は、覚悟を決めた様にドアから手を離した。