Freiheit IV (ページ33)

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はぐれていたのが幸を期したのか、如何せん基地に1番近い場所にいた向井は、元アサシンの体力と移動時間短縮の技を使って10分程早くαの王城に辿り着いた。
中から戦乱の音が聞こえてくる。普通に入れば接敵し、余計に時間がかかるだろう。
けれど、向井は裏ルートを知っていた。
今は目黒が使っている、かつて深澤を暗殺しようとした時に使った天井裏ルートである。

案外長年使っていなくてもルートは覚えているもので、向井は誰に気付かれる事もなくS隊のベースに辿り着いた。
銃撃の音を頼りに宮舘のいる位置を推測し、天井裏を進む。
…いた、割とボロボロに近い宮舘の姿を見て、敵の量は少なくはないと判断し
向井｢It's show time！｣
通気口から、スモークグレネードを投げ飛ばした。

白煙の中を気配だけを察知して向井は愛用の短剣で敵をなぎ倒していく。
アサシン時代に研ぎ澄まれた五感は、かつてより劣っているとはいえここら一体の目くらましされた敵の居所を察知するには充分であった。
やっと晴れてきた視界の中、宮舘に駆け寄る。

向井｢お待たせダテ！ってめっちゃ怪我してるやん！｣
宮舘｢割と撃たれてたみたい、ごめん｣
向井｢もう、肩貸すわ。1回医務室行こ？｣
宮舘｢…ごめん｣
向井の肩を借り、宮舘は医務室へと向かう。
が、運悪くまだ残っていた敵とエンカウントしてしまった。

向井｢うーわ。ダテ、いける？｣
宮舘｢…援護する｣
向井｢ダテのフォローありとかめっちゃ心強いやん！｣
短剣片手に走り出す向井の後ろで、スナイパーライフルを持ち、しゃがんだ姿勢で撃つ。
さながら舞台の上で鮮やかに舞うかのように動く｢役者｣を、舞台裏から支える｢裏方｣のように。
｢呪い｣は使っていないはずなのに、確かにそこに｢舞台｣は存在していた。