検索窓
今日:12 hit、昨日:52 hit、合計:468,864 hit

ページ27

目黒「……馬鹿、」
向井の元に目黒が辿り着いた時には、既に向井は「観客」を舞うように斬り殺していた。
あの場に近付けば、「観客」の一部に成り下がるだろう。
けれど、見過ごす訳にはいかない。

目黒は走り出す。
「観客」の中にはラウールの姿もあった。
あの馬鹿、味方まで「観客」にしてどうすんだ!
走りながら投擲したナイフは、全て短剣に弾かれた。
…そういえば、こいつも元はアサシンだったっけ。
なんて追想しながら、ナイフを小銃に構え直し、上演中の「舞台」へと撃ち込んだ。

キン、と弾かれた銃弾に、思わず目を開く。
撃ち放たれた銃弾を刃物で弾く、なんてそれこそフィクションの世界でしか有り得ない芸当だ。
それを、向井がやってのけたのだ。
あのいつもふざけてばっかりで、目黒に変にベタベタしてくるあの向井が。
目黒「…はは」
思わず笑みが零れる。
何だよ、お前そんなマジな顔、出来るんじゃん。

彼に近づけば近付く程、心地よい夢の中に浸っていたくなるような感覚に襲われる。
血飛沫が全て「演出」の赤いライトのように輝いて、クラっとする。
成程、成程。彼の「舞台」にいつも「観客」しかいないのは、これに目が眩むからか。

目黒「けどさ、康二」
腰に下げていた、今日は使わないかもしれないと思っていた鉄扇を手に、目黒は跳躍した。
目黒「俺は「最前列」よりもいい場所知ってるんだよね」
ガキン、と言う音と共に、鉄扇と短剣が鍔迫り合い、夕陽の瞳と交わった。

向井「めめ…!?」
目黒「やっぱり「舞台上」の景色が1番いい」
向井「あかんよめめ、めめまで「観客」になっちゃう」
目黒「馬鹿だな、俺が「観客」なんかに収まると思う?」
向井「…でも、」
目黒「ラウールは怪我させなきゃいいんだろ」
向井「…うん」
目黒「歯切れ悪…いいじゃん、見せてやろうよ、ラウールに。俺たちの戦い方ってやつ」
向井「…ごめん」
目黒「ほら、早く照らして。本当に眩しくて目が眩みそうだけど、そのおかげで「影」が出来るんだから」
そう言って目黒はネックレスを外し、鉄扇を手に舞うように、向井の影に溶けた。

*→←Rc13:客席向こうのグランギニョール



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (362 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1023人がお気に入り
設定タグ:Snowman , ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

凌央(プロフ) - 湊都さん» とんでもないです!楽しみにしていますね! (2020年2月21日 16時) (レス) id: 0708d16a2f (このIDを非表示/違反報告)
湊都(プロフ) - 凌央さん» 誠に申し訳ございません…。31個目なのでリクエストお受けする事が出来ないです。けど、リクエスト内容と淩央様のお気持ちを加味して、他の方のリクエストの時に少し挟めるよう尽力致します。このような形で申し訳ございません。 (2020年2月20日 22時) (レス) id: 9124562c1c (このIDを非表示/違反報告)
凌央(プロフ) - はじめまして。更新お疲れ様です。初リクエストで緊張しています。可能でしたら、それぞれの入団試験話を読みたいです。是非よろしくお願いします。 (2020年2月20日 22時) (レス) id: 0708d16a2f (このIDを非表示/違反報告)
ささ(プロフ) - はじめまして。いつも更新を楽しみにしています。リクエスト可能でしたら、S隊みんなで野外訓練しつつキャンプを楽しむような話が読んでみたいです。よろしくお願い致します。 (2020年2月20日 21時) (レス) id: da0f7ba994 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 文字数関係で連投になってしまい申し訳ありません。無理でしたらもちろんスルーして構いません。お忙しいと思いますがよろしくお願い致します。 (2020年2月20日 17時) (レス) id: 4ea8c2cdf9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:湊都 | 作成日時:2020年2月13日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。