番外編 .. ページ32
..
埃っぽい室内の中。
窓、と言っていいのかはわからないが壁に穴が開いてそこから外の夕日が差し込んできた。
まだ明るい夕日が室内を明るく照らして埃の積もっている床に二つの影を映し出していた。
二つの影。
ひとつは小さな影を覆う形で、もう一つは覆われて包み込まれる影。
トクトクトク…。
心臓の音が聞こえてきた。
心音と呼吸数を感じ取りながらただ時間を過ごしていった。
抱きしめたまま感情の揺れを伺ってみると当初よりは落ち着いているものの、其れでも揺れが収まらない様子だった。
普段よりも呼吸が揺れて、心音も少しだけいつもと違っているように感じられた。
黒い髪に視線を向けて、なかなか合わない目に内心で苦笑いを零した。
「フェイ。何か不安なことでもあるの？」
声を掛けるとピクリ、と反応したフェイ。
何かに迷っているように視線を逸らして小さな声で返答を返された。
「……別に…何も、ないね。」
視線を逸らし続ける様子に、おや。と心の中で呟いた。
フェイがAに対してこのような態度をとることは今までになく、何時も聞いたことは答えてくれていた。
今回は、どちらかと言えば言いにくいのだろう。
視線を逸らした瞳を覗き込めば小刻みに震えている様子が窺えたから。
何か怖い事でもあったのだろうか。
でもフェイにトラウマや恐怖するものがあった、なんて話は聞いたことが無いし今まで一緒に暮らしてきた中で見かけたこともない。
いったい何がフェイをこんな風にしたのだろうか。
首を傾げて考え込むAにフェイタンはチラッ、と視線を向けながらまたふいっ、と目を逸らした。
その様子に気が付いていたAは何か言いたいことがあるのだろうか。とフェイの頭を撫でて先を促すようにする。
フェイはAに抱きしめられることも好きなのだが、こうして頭を撫でるととても嬉しそうな表情をするのだ。
本人が気付いているのかどうかは知らないが、その表情を見て日々癒されている。
視線が向けられたと思えば逸らされ、何かを考える様に視線を彷徨わせるフェイの様子を見守りながら小さい声で呟かれた言葉に耳を傾ける。
「…A、は……」
「うん。」
「……ワタシ達の事、嫌わないのか」
「…どうしてそう思ったのかしら、フェイ。」
「……。」
ぽつりと小さな声で呟いたその後は黙ってしまった。
フェイタンが、気まずそうに身を固くする様子が伝わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 470人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
xxxxxers(プロフ) - ほんとに面白くて4時間？3時間ほどで読み終えてしまいました！随分前に更新停止しているのはわかっているのですが、できるのであればこの作品の完結を見届けたい限りです…！どうぞ作者様のお身体一番に考え、今後の更新お待ちしております…！！！！ (3月28日 12時) (
レス) @page36 id: 13f4a23a05 (このIDを非表示/違反報告)
huji山(プロフ) - とても面白くて一気読みさせて頂きました(^^)更新待ってます。でも無理はしないでくださいね (10月29日 16時) (レス) @page3 id: 704ce5ae45 (このIDを非表示/違反報告)
g9bdo(プロフ) - 本当に好きな作品です！更新待ってます😆 (2022年8月27日 3時) (レス) @page36 id: ba5c48af12 (このIDを非表示/違反報告)
名無し64451号(プロフ) - 更新ずっと待ってます(泣) (2022年8月17日 17時) (レス) @page36 id: 6f674f571c (このIDを非表示/違反報告)
あやは(プロフ) - 作品すごく面白くて、子蜘蛛のみんながかわいすぎます。様々なことがあるとはおまいまさが、更新楽しみに待っています。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: df4b2b1b15 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：高校生 | 作成日時：2017年2月2日 0時
