第八十九話 抱擁 ページ43
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手元にある本へと視線を戻そうとするとお風呂から上がって此方へと近づいてくる足音に顔をあげる。
「A。」
「ん？ クロロ、髪の毛ちゃんと乾かさないと風邪ひくわよ」
うん。と肯定しながらも首にかけたタオルを取って拭こうとしない様子に仕方がないな。と笑いながらもクロロの手を引いて座らせる。
タオルを取ってしっとりと濡れた髪の毛を乾かすと目を細めて嬉しそうな表情と雰囲気を出す様子に可愛いなあ。と思いながら手を動かす。
親にあったこともなければ兄弟も居ないこの子達は彼らからもらう優しさや温もり、厳しさや正しさを知らない。
Aと出会うまではただいま。おかえり。という言葉の意味も知らず、その言葉に込められた温かさも知らなかった。
クロロの様にお風呂から上がっても髪を乾かさずにAに乾かして。と甘えてくる子は他にもいる。マチやパクは毎日で、時々クロロやフェイタンが来る。
他の皆も数日おきにこうして甘えてくるし、Aもこの行動の意味が分かっているのでそれを受け止めている。
親や兄弟が居なくて愛情を知らないのなら私が与えれば良い。と思っている。
さらさらとした黒髪に指先が触れるのを楽しみながら全体的に水気が飛んで乾いてきたのを確認すると髪の毛を乾かす手を止めた。
Aに背中を向けて床に座るクロロが髪の毛を乾かすことが終わったことを理解すると身体の力を抜いて上体を後ろに倒した。
柔らかくて暖かい、香水や香りのするものを付けていないはずなのにAからする落ち着く匂いにリラックスするように目を細める。
甘える様にすり寄ればそれを受け入れる様に優しく包み込むように腕を回されて、少し前までは知らなかったそれは、愛情。
冷たく乾ききった心が優しさと温もりを肌で感じることによって満たされ潤われる感覚。
寂しい時、不安な時、辛い時、痛い時、苦しい時。
今まではそんな事はいくらでも経験してきたし、どうしようもなかったので慣れている。と偽って過ごしてきた。
それでも、今。
この温もりを知って包まれてしまえば、気づかぬうちに震えていた身体も、傷ついた心も全部癒された。
ただ抱きしめられただけで涙が出るだなんて、初めは戸惑った。
自身が弱くなってしまった。と思うこともあった。
けれども、実際はその逆で心が安定して自分の足で心からしっかりと地面を歩けるようになったのだ。
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曇天に笑う(プロフ) - 高校生さん» ありがとうございます！こんな無茶に応えていただきほんとに嬉しいです(*｀ω´)これからも更新楽しみにしています！ (2017年2月1日 23時) (
レス) id: cbd3a1b3b1 (このIDを非表示/違反報告)
高校生(プロフ) - 曇天に笑うさん» ありがとうございます。ええ。大丈夫です 明日が丁度二日で好きな数字ですので書いて投稿してみますね。 (2017年2月1日 22時) (レス) id: 422479f97e (このIDを非表示/違反報告)
高校生(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます。 (2017年2月1日 22時) (レス) id: 422479f97e (このIDを非表示/違反報告)
曇天に笑う(プロフ) - とても面白かったです！更新楽しみにしています！出来ればなのですが、旅団の人達が迷子になった所を描いて欲しいです( ´-ω-)出来ればでいいのでお願いします！_:(´ω`」 ∠):_ (2017年2月1日 10時) (レス) id: cbd3a1b3b1 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 読みやすくて凄く面白かったです！これから、また新しいキャラが出て来るの楽しみですね(´ｰ｀)更新応援しています！ (2017年1月4日 11時) (レス) id: 76d1df2f9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：高校生 | 作成日時：2016年8月28日 0時
